学生ローン免除「米GDP押し上げは0.1%未満」 ゴールドマン

Photo by Chip Somodevilla/Getty Images

ジョー・バイデン米次期大統領の就任を前に学生ローンの減免をめぐる議論が熱を帯びるなか、ゴールドマン・サックスは、学生ローンを大幅に免除しても、米経済の成長への効果はごくわずかにとどまるとの見通しを明らかにした。

学生ローンの減免は、人種間の不平等の是正をはかり、新型コロナウイルスで影響を受けた人を支援しつつ、同時に経済活動を活発にする方策として、革新派の議員や一部の経済学者らが支持している。

バイデンも大統領選で、学生ローンについて、支払い開始から20年たてば残額を免除することや、毎月の返済額の上限を可処分所得の5%にすることなどを公約。また、一部の民主党上院議員と同様に、新型コロナ対策として、すべての借り手を対象に学生ローンを「今すぐ」1万ドル(約104万円)減額するよう議会に求めている。

しかし、ゴールドマンは7日の顧客向けリポートで、仮に連邦政府の学生ローンを借り手全員を対象に最大1万ドル免除しても、2021〜30年の米国内総生産(GDP)は年に0.1%足らずしか増えないとの試算を示した。1ドル免除しても実質GDPの増加は43セントにとどまるという。

米国では4300万人あまりが連邦政府から計1兆6000億ドル近くの学生ローンを借りており、その大半は中所得から高所得の世帯がかかえている。ゴールドマンはこれらの世帯について、返済を免除された分のお金の大半は使わずに貯蓄する可能性が高いと指摘している。これは、学生ローンの免除は高所得者に恩恵が偏るという批判に通じる見方だ。

一方、ゴールドマンの試算によれば、1人あたり1万ドルを上限に学生ローンを免除するには、GDPの約1.6%に相当する約3000億ドルの予算が必要になる。バイデンは約束していないが、仮に上限を5万ドルに引き上げると、予算規模は約8000億ドルまで膨れ上がる。

ゴールドマンによると、学生ローンの免除は、短期的に税制面で借り手に不利な影響を及ぼすおそれもある。債務免除は通常、課税所得として扱われるため、税制が変更されないかぎり、借り手は最終的に免除額の約20%を支払わなくてはならなくなる可能性があるからだ。

経済学者らは米国の学生ローンについて、金融危機を引き起こしたサブプライム住宅ローンに似た巨大な債務バブルを生み出していると警鐘を鳴らしている。学生ローンは昨年、米国で住宅ローン以外では最大の負債になっている。

編集=江戸伸禎

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