2020年8月にIPOし、20年12月期第3四半期の決算では、売上高前年同期比104%成長、7期連続増収・増益を記録した。代表取締役社長の重松路威は今後、どのような戦略を描いているのか。
──ユニコーン(未上場企業で評価額1100億円以上)企業に代表されるように未上場時に大きく成長してからIPOすることが流行する中、なぜ、創業3年以内に上場したのか。
創業時(2018年1月)から、我々の事業領域であるAIは10年以内に「世界の勢力図」が決まると思っていた。インターネット領域で、検索エンジンがグーグルに標準化・統一されるまで10年程度だった時間軸と同様と言えるのではないか。現在、AIをめぐる競争環境は、GAFAMやアリババ、テンセントといった世界のテックジャイアントと、急成長するセンスタイムなどの新興企業が激しく競争しており、今後数年でその勝負がつくという認識だ。
その競争環境下で勝つことから逆算した時に、上場まで多くの時間を費やすことは選択肢として考えていなかった。なぜなら、未上場企業であることのメリットを見出せなかったからだ。
たとえば、大型資金調達しながら成長ステージごとに組織を作り直すことで、本来必要ない議論に時間を取られてしまう。組織がまだ小さい段階で上場し、ガバナンス体制をはじめ、ベストプラクティスの体制にしておくことで、成長過程での足かせをなくすことで、より非連続な成長ができるのではないか、と考えた。
こうした背景には、前職、マッキンゼー・アンド・カンパニーでの経験が影響している。「マッキンゼーの7S」に代表される組織構築や戦略、世界最高水準のコンプライアンス意識、プロフェッショナルスタンダードに執着すると同時に、世界各地のクライアント企業から学んだ最先端の組織体制の即時での構築を目指している。
──AI事業を幅広く手がけている。
創業当初は、事業領域を絞った方が急速な成長ができると考え、ファッションポケットという社名でファッション業界に特化したAI事業を行なっていた。創業前に業界外から見ると、AI企業によるPOC(概念実証)が各種行われ、「進んでいる」と思っていたからだ。
ただ、業界で事業を進めていくなかで、そうではないと気がついた。アマゾンエコーに代表される音声認識サービスくらいしか事例として出てこない、試行錯誤が終わっていない段階だった。だから、私たちは現在、「映像」という観点からスマートシティ領域で6つの事業を展開している。