11月下旬に開催されたアフリカのテックベンチャー成長支援のためのプラットフォーム、アフリカリーナ(AfricArena)のイベントを受けて、アフリカのテックベンチャー・エコシステムの現状と多様化について考察する(前編:テックベンチャー・エコシステムの概説はこちら)。
ベンチャー投資の多様化・民主化
テックベンチャーVC投資市場を牽引する米国において、ベンチャーキャピタルの投資を受けた起業家のうち、黒人が占める割合はわずか1%(RateMyInvestorの2017年の調査報告書に参照)。
ニューヨークのVC、Equal Venturesのファウンダーであるリチャード・カービー(Richard Kirby)がまとめた2018年のデータによると、約1500名の投資家のうち70%が白人、82%が男性、そして40%がハーバード大学かスタンフォード大学の出身者。黒人投資家の割合は全体の3%だ。
こうした「シリコンバレーの課題」は、アフリカのベンチャー・エコシステムにも無関係ではない。数年前、テックベンチャーのハブの一つである、ケニアのナイロビで資金調達に成功した主要ベンチャーのファウンダーや幹部の多くが、白人の外国人であることが指摘され、議論となった。
ガーディアンの記事によると、2019年、ケニアで100万ドル以上の資金を調達したスタートアップのうち、現地人起業家が率いる企業の割合はわずか6%。欧米などの若手起業家は、ギャップイヤーでアフリカに渡航し、比較的低いリスクで起業に挑めるという有利な点も指摘されている。
また、同記事によると過去5年間のアフリカのVC投資のうち、42%が北米拠点の投資家で、アフリカ拠点の投資家が占める割合は20%(African Private Equity and Venture Capital Association調べ)だ。
資金調達においては、事業構想や事業モデルはもちろんだが、起業家がいかに投資家の信頼を得られるか、信頼関係を構築できるかという点も重要だ。投資家側も、自分が想像できないペインポイント(想定顧客の悩みの種)や、自分が理解できないビジネスモデルに対して、投資の判断を下すのは難しい。
たとえ無意識的だとしても、外国人・白人(男性)投資家の、ケニア人(アフリカ黒人)に対する偏見や、白人に対する親近感が、残念ながらこうした投資データに反映されているようだ。