新しいライフスタイルの構築とは、暮らしをより豊かに、より便利にするような着想だ。既存インフラがテクノロジーによって改善され、簡便化され、データ化されたスマート・シティを想像すると分かりやすいかもしれない。
一方、基本的な生活インフラが整い切れていないアフリカの多くの都市においては、第一にファンクショナル・シティ(機能する都市)の構築を視野に入れる必要がある。つまり、電気・水道、交通、インターネット、そしてペイメントや物流も含め、政府や企業のトランザクションをきちんと機能させるための課題解決の着想が求められる。
こうした課題解決の二面性は、アフリカにおけるスタートアップが向き合う課題であると同時に、比類なくエキサイティングな可能性も秘めている。モバイル・ペイメントやドローンのような新しいライフスタイル・ソリューションが、開発課題解決のソリューションともなりうるからだ。いわゆる「リープフロッグ」といわれる経済発展の飛躍現象だ。
アフリカに特化したVC、アンカバード・ファンド(Uncovered Fund) の代表を務める寺久保拓摩は、昨年東京で開催されたスタートアップカンファレンスNext Silicon Valleyに登壇し、アフリカの強みは、スタートアップが社会インフラ(OS)を作れることにあると述べている。
また同イベントの主催者との事前インタビューでも、物流、エネルギー、電力、ガスなどの生活インフラに関するソリューションの領域は、日本の企業にとっての事業機会であるとの考えを共有した。
「スタートアップ法」で優遇
スタートアップを経済発展戦略の主要な柱の一つと位置づけ、スタートアップ法(Startup Act)の制定を進めている国もある。スタートアップ法の詳細は国によって異なるが、スタートアップや投資家に対する税制優遇などを制定することで、起業や投資を促進させることが狙いだ。
アフリカ初のケースとしては、2018年にチュニジアがスタートアップ法を導入した。税制優遇だけでなく、スタートアップあたり創業者最大3名に対して、創業年の給与を政府が負担するといった条項も含まれている。続いてセネガルでも昨年可決され、マリ、ガーナでも法整備が進んでいる。
一方、テックスタートアップを牽引する南アフリカ、ナイジェリア、ケニアでは、スタートアップ法という形での具体的な動きは現時点ではないようだ。