ワインとともに2020年を振り返る 記憶に残るシャンパーニュ5選

ワインが生まれるその場所で、そのワインを味見することは、格別の体験

年末年始に向けて活躍するのが、スパークリング・ワイン。クリスマスディナーや年始の集いには、家でもレストランでも、シャンパーニュを選ぶ人も多いのではないだろうか。そこで、2020年の収穫年を振り返り、今年、心に残った5本を紹介したい。

自然が味方した最良の収穫年


2020年のシャンパーニュの収穫は、例年に比べて記録的に早く、8月中旬に始まった。ブドウの生育期に新型コロナウイルスが猛威を奮い始め、制約があったものの、ブドウ栽培農家は例年同様に畑仕事に注力した。収穫時には地域外から多くの人が働きにやって来るが、その際にはPCR検査をおこない、ブドウの収穫はマスクを着用した上で、距離をとっておこなわれるという異例の年となった。

お祝いごとやイベントに結びついているシャンパーニュの今年の販売は、大幅に減少している。難しい状況だったが、天候に恵まれ、2018年、2019年に続き、2020年のブドウの品質は高く、大きな期待が持てる年となった。

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畑の写真のキャプション「シャンパーニュ・アイ村での収穫の様子」

De Venoge 1999マグナム


De Venoge(ドュ・ヴェノージュ)は、シャンパーニュの中心地エペルネが拠点の由緒あるメゾンだ。その1999年のマグナムボトルを、汐留にあるコンラッド東京のラウンジで、東京湾の夜景ともに楽しむ機会があった。

マグナムボトルは、通常ボトルの2倍量で、ゆっくりと熟成がすすむ。この1999年のマグナムボトルは、メニル村のシャルドネから造られ、長期間にわたり澱とともに熟成された特別なもので、20年超のときを経たとは思えないフレッシュさとはつらつとした酸、さらに、カスタードやモカといった香ばしい熟成のニュアンスが感じられた。

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Louis Roederer Brut Nature Rose 2012


Louis Roederer(ルイ・ロデレール)の「Brut Nature」は、自然の恵みが、数々の条件を満たした年にのみ造られる特別なシャンパーニュで、これまでに、2006年、2009年、そして2012年収穫年のワインがリリースされている。

太陽が降り注ぐ、キュミエール村の南向き斜面の畑で、3種のブドウ品種(ピノ・ノワール、シャルドネ、ムニエ)を同時に収穫、圧搾、そして発酵して造られる。この畑は、ビオディナミ農法により耕作され、畑に活力があり、エネルギーを感じる場所だ。

「Brut Nature」は、ドサージュ(最終的な甘辛調整の糖分追加)はゼロ。この2012年のロゼは、一切の無駄がなく、研ぎ澄まされ、ピントの合った辛口だが、成熟した赤果実のやわらかさをも感じさせ、口の中で風味が広がる豊かなワインだ。ルイ・ロデレールでは、2020年も、自然の恵みに支えられ、このBrut Natureを仕込んでいるという。

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スタイリッシュなラベルはフランス人デザイナー、フィリップ・スタルク氏が手がける
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文・写真=島悠里

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