ビジネス

2020.12.18

ヒットする「D2Cブランド」の共通点 GREEN SPOONとMakuakeの考え

北原成憲(左)、石川達也(右)


独自性とベネフィットを両立させる


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北原:先ほど「ブランドは記憶」と言いましたが、記憶を積み重ねていく体験の根幹には提供する「商品やサービス」があります。

その商品やサービスがユーザーに選ばれるためには、「独自性」と「ベネフィット(便益)」の2つのポイントが必要だと思っています。独自性は言葉通りライバルと同質化しないオリジナリティで、ベネフィットはユーザーがそこにどんな価値を見出してくれるのかです。

例えば、ベネフィットを意識しすぎて独自性が抜けてしまうと、ユーザーニーズに引き寄せられてみんなが同じものを狙って作ったときに、自分たちの商品が選ばれる必然性がなくなってしまい、同質化してしまいます。

そういう意味で、GREEN SPOONは独自性とベネフィットの両方がちゃんとあると思っています。まず、独自性は「健康になるための不透明性を透明にする」ことにチャレンジをしたこと。

健康になるために「自分がどういう野菜を食べたら良いかわからない」「とりあえず高い野菜ジュースを買っておけばいいか」という不透明な世の中を、「一人一人の生活習慣に合わせてパーソナルスムージーを提供する」ことで透明にしています。

ベネフィットは、健康的な食生活が提供されたことで、その人自身の「自己肯定感」が高まること。この「自己肯定感」というベネフィットは、GREEN SPOON代表である田邊さんの原体験からも来ており、そのエピソードにもとても共感しました。独自性とベネフィットが両立しているからこそ、ユーザーから支持されるオンリーワンなブランドになっていると思います。

石川:独自性は「不透明性を透明にする」こともそうですが、人をど真ん中に置くこともGREEN SPOONの強みです。ただのスムージーブランドではなく、ウェルネスブランドと打ち出すことで、他のスムージーブランドと変わってくると思うんです。

また、独自性は “展開性”がないといけない。そのときだけ独自性があるのでなく、ある程度の抽象度を持った思想を根っこに据えた上で横展開できることも大事だと思っています。

そのあたりは田邊さんとすごく話をして、GREEN SPOONの独自性は何か。フローズン、サブスク、パーソナルといった価値を翻訳して社会につなげていき、いかに機能からベネフィットへ転換させていくかを考えました。

なぜ、GREEN SPOONのデザインは「イラスト」なのか?


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北原:マクアケでも「ベネフィットストラテジーシート」というフレームをつくり、商品やサービスの独自性の高い機能・性能がもたらす「結果」の定義(メリットの定義)、そしてターゲットというフィルターを通して「どんな便益を提供するのか」を定義(ベネフィットの定義)します。

独自性からベネフィットを考えていくんです。機能、性能がユニークで、それを体験として定義できると強い製品になっていくと思います。

石川:ベネフィットはブランドが考えているだけでもダメで、GREEN SPOONではその「語られ方」まで設計しました。購入後にインスタグラムでどんな写真がアップされ、どう語られていくのかを考えながら、ブランドのトーンも作っています。

パーソナルスムージーというのは使ってみたくなる言葉だから、語りたくなる要素になる。また、パッケージデザインを考えるときに、あえて野菜とフルーツを描かなかったのも、語られ方のためのひとつのデザインです。

ブランドが描かないことで、それをブランドに変わってユーザーが表現してくれるんです。どう写真を撮られ、SNSに上げられるかを考えることはとても重要です。

パッケージに野菜やフルーツが可愛く描かれていたら、多分みんながその写真を撮るでしょう。でもGREEN SPOONは、カップの中に入っている“本物の野菜やフルーツ”を撮って欲しかったんです。

だからこそ、フタを開けて中身を見た時のサプライズや高揚感が欲しかった。そこで、あえてパッケージに野菜やフルーツを描くのをやめましょうと提案しました。

もともと、D2Cブランドが台頭する前は小売業を中心に、いかに売り場の棚をとるかが重視されてきました。きっと、従来の売り方ではあのデザインは提案していません。

野菜やフルーツを描いてないことが遊び心になり、全種類イラストが違うのでワクワクしてもらえる。田邊さんには体験を最大化するために、本当に信頼していただき、勇気のある決断をしていただけたと思っています。
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文=Makuake

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