高橋祥子がすすめる、色々あった2020年に読んで特に良かった本

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6. 「ブループリント:「よい未来」を築くための進化論と人類史(上)」

ニコラス・クリスタキス著/鬼澤 忍、塩原通緒 訳(NewsPicksパブリッシング)

経済格差、人種間対立、国家間対立など、何かと格差・分断が注目される時代に、今後どうなってしまうのだろうかという議論もありますが、この本はその風潮に対する解の一つの可能性を提案する本です。

人類は長短様々な進化期間を経て、より安全で穏やかな世界を築く方向に働いているという人間の遺伝子としての愛や繋がりについての共通性に焦点を当てた生物学×社会学の視点の内容です。


ニコラス・クリスタキス(Getty Images)

ビル・ゲイツが「これほどの『希望』を感じて本書を読み終えるとは、予想もしなかった」と感想を書いているので、一体どんな解決策が書いてあるのだろうと期待して読むと実はそうではなく、私たち自身である人類のことをより好きになり、現代の課題を解決していける潜在性があると信じられるようになる本だと思いました。

また、人が形成するコミュニティについて「意図せざるコミュニティ」「意図されたコミュニティ」「人工的なコミュニティ」など書かれていて、単純に、仕事やプライベートでコミュニティ作りをする人にもヒントがたくさんあると思いました。

7. 「現代経済学の直観的方法」

長沼伸一郎 著(講談社)

これはもう傑作としか言いようがなく、本として世に出してくださってありがとう!と言いたいです。資本主義とは何か、経済とは何かを、直観的に、映画を見るかのように理解したい方にはお薦めで、特に理系の方で経済に苦手意識のある方にはドハマりなのではないかと思います。そういう捉え方で理解できるのか、と読んでいて気持ちがいいです。

特に経営者や経済学に関わっている方の中では、最後の方の章の現在・未来についての内容については議論がある内容だと思いますが、それもそれまでの章がとても素晴らしく良書であることの前提だと思います。

8. 「ライフスパン─老いなき世界」

デビッド・A・シンクレア、マシュー・D・ラプラント 著/梶山あゆみ 訳(東洋経済新報社)

最近、不老長寿系のスタートアップが欧米中では増えてきていますが、これは長寿研究で有名なシンクレア教授が書いた本で、不老長寿に関する最新の研究動向とそれが実現したときの世界の課題や解決法を提唱するものです。

遺伝子の研究をしている私としても、こういう本がいつか出るのではと期待していましたが、ついに出ましたね。単純に不老長寿ってできたらいいよね、という個人レベルの話ではなく、地球上に人口は何人まで生存可能なのか? 寿命が長くなれば貧富の格差も広がるのではないか? CO2の排出量も増えるとどうするのか?
など、思考をストレッチさせるにはとても良い本です。

他にもたくさん震えるくらい面白く読んでよかった本がたくさんあり、著者の方や出版社の方々に本当に感謝しています。その中でも今回は、特定の事象の課題解決にとどまらず多くの人の人生に広く関係するような本を紹介させていただきました。年末年始に是非読んでみてはいかがでしょうか?

連載:ゲノム解析の女性起業家が考える、私たちの未来
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文=高橋祥子

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