高橋祥子がすすめる、色々あった2020年に読んで特に良かった本

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3. 「進化の意外な順序ー感情、意識、創造性と文化の起源」

アントニオ・ダマシオ著/高橋 洋 訳(白揚社)

この本は「進化の意外な順序」というタイトルでありながら、メインは進化の話というより神経科学者による「感情・心」とは何か?の話です。

2020年は世界的な感染症流行で、科学・医学がとても大事にも関わらず、フェイクニュースも多く出回りました。感情が優先して事実を曲解してしまうことがなぜ故起こるのかと疑問だったのですが、この本を読んでよく理解できました。

なぜ感情が生命活動にとって根幹として大事なのか、なぜ感情に振り回されてしまうのか、感情は生体を生存に有利にするものにも関わらず感情に任せていては組織、国、政治は成り立たないのはなぜか? と生物学的な観点で説明されていて、著者にとても感謝しました。感情と向き合いたくなったら読むと良いインプットが得られると思います。


アントニオ・ダマシオ(Getty Images)

4. 「時間は存在しない」

カルロ・ロヴェッリ著/冨永 星 訳(NHK出版)

私がとても好きな本は物理学者が書く本が多いのですが、この本も物理学者による時間とは何かの解説です。

みんな生まれてから死ぬまでの間の時間の中で過ごし、現代社会においては、日々時間に縛られているような感覚もあります。今年は時間の過ごし方や感覚が変わったという方も多いかもしれません。そんな中、そもそも「時間」とはなにか、どのような性質のものなのか、など、人類は時間軸に対する正確な認識をできるとより進化できるのではと個人的に考えています。

物理学者にとっては当たり前の内容かもしれませんが、理論物理学者の視点から時間に関する様々な考察が明快で、時間に関する性質の理解にとても役立ちました。

逆説的ですが、時間のある方は「時間は存在しない」を読んでみては。

5. 「社会はどう進化するのか─進化生物学が拓く新しい世界観」

デイヴィッド・スローン・ウィルソン著/高橋 洋 訳(亜紀書房)

人間の社会や経済活動のメカニズムに、進化生物学の観点から切り込んでいく本です。進化論を道具として社会、集団、企業の持つ性質やあり方を考察していく本で、(虫が苦手なので表紙が怖くて買うのを躊躇したのですが)とても面白かったです。

社会的相互作用の産物として私たち個人が存在するということ、変化に適応していくときに進化生物学から言えること、低次の生物的自己利益の追求が無条件に公共善に資することはないと進化的観点から言えること、など、組織やチームを作ったり社会と自己の関わりを考えていくときにとても有用な本だと思います
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文=高橋祥子

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