例えば、英国のラフバラー大学で応用航空力学の講師を務めるダンカン・ウォーカー氏による試算によると、電力のみに依存した場合、A380スーパージャンボの航続距離は15000キロからわずか1000キロに減少するとしています。
航空業界におけるイノベーション
より小規模の、業界の末端を担う航空会社にとっては、状況はより楽観的です。ニュージーランドが試験運用中の2人乗りのピピストレル機は、1回の充電で1時間の空中滞在が可能な上に、30分間の予備電力を残すことができます。短時間の遊覧飛行にはこれで十分です。
エアバスとロールスロイスは、4つのジェットエンジンのうち、ひとつを2メガワットの電動モーターに置き換えたハイブリット旅客機「E-FanX」の試験飛行をすでに終えています。エアバスもボーイングも、電動航空機への取り組みを進めていますが、ボーイングは完全な電動旅客機の運用までにはまだ数十年かかるとしています。
エアバスは、水蒸気のみを排出する一連の水素駆動の旅客機の開発にも取り組んでいます。これは、バッテリーを十分に軽くすることができれば、電力と水蒸気を併用することができるようになるので、電力を除外しようというものではありません。
一方、ボーイングの次のイノベーションプログラムには、小型の電動垂直離着陸機が含まれています。そして、ドローンスタイルの垂直離陸推進システムを活用した電動エアタクシーは、世界各地の100社以上で開発が進んでいる、とBBCは報じています。
ドイツのボロコプターが開発した電動エアタクシーは、2016年にすでに公式の飛行証明を取得し、世界経済フォーラムの「テクノロジー・パイオニア2019」にも選ばれています。ドバイおよびシンガポールで実証が行われました。
つまり、規制当局からの承認が得られれば、近い将来、電動エアタクシーや小型飛行機が実用化される可能性は大いにあります。しかし、電動旅客機の誕生は、バッテリー技術が進化してより軽く、強力になるまで待つことになるかもしれません。
ゼロカーボン達成への挑戦
国連は、ゼロカーボン・リカバリーに向け、企業、都市、地域、投資家の支援を動員し、気候変動を引き起こす炭素排出を削減するためのアクションを加速させていく世界的なキャンペーン「レース・トゥ・ゼロ」をスタートさせました。
世界経済フォーラムは、11月10日から12日にかけて「レース・トゥ・ゼロ・ダイアログ」をオンラインで開催。企業および公共部門のリーダーたちが集まり、航空を含むさまざまな業界でゼロカーボンを達成する方法を議論しました。
そして、11月16日から20日にかけ開催された、世界経済フォーラムの「変革のパイオニア・サミット2020」は、新型コロナウイルスのパンデミックの余波を受け、よりレジリエントで持続可能な世界を構築するための機会をいかに活用するかという点を焦点に、議論がもたれました。
(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)
連載:世界が直面する課題の解決方法
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