婚活リアリティ「バチェロレッテ」 福田萌子と『選ばれなかった』男たち


自分の過去を相手に話す行為は一種の自己開示で、相手との距離を縮める手段にもなり得る。だが、今回のケースは萌子さんへ不安を与えただけのように思う。そして、打ち明けることで禊を終えた気になっているようにも受け取れた。

また、離婚理由を打ち明けるタイミングを完全に見誤っていたのと、結婚・離婚経験があるにもかかわらず男女関係におけるPDCAを回せていなかったのも痛手だ。

たとえば今目の前にいる萌子とどう向き合って愛を育んでいきたいか、過去の過ちを踏まえたなら、ただの不倫報告で終わらなかったはずだ。彼は萌子ではなく自分と向き合っている。過去を経験値としていかしPDCAを回せていたら、彼にもチャンスはあったのかもしれない。

ケース2 「演じている自分」から脱けられない男


下山と同じく第3話で離脱したイベントオーガナイザーの藤井達也。お調子者のムードメーカーで、いつも笑顔を振りまいていた。

だが、どこか表層的で、発言も軽い。他者からの視線に敏感で、明るく見られたいという自分の願望からそのようなキャラクターを演じているように感じた。決して器用ではないため、要所要所で「綻び」も垣間見える。

「ローズセレモニー」を前に萌子から別れを告げられた藤井は、この時初めて演じるのをやめ、萌子に本音をもらした。

「俺は自分を理解できていないんだよね。人に合わせて生きているのかな。自分の中で嫌なわけよ、そんな自分が」

「(自分らしく生きている萌子が)羨ましい、すごく羨ましいです」

下山と同様、藤井もまた、自分と向き合っている最中。だが、藤井の最後に見せたか弱い本心は、たしかに萌子の胸を打っていた。弱さは欠点ではないのだ。もっと早く、心の鎧を脱いでいたら。そんなことを思わずにはいられなかった。

ケース3 「自分の世界を持っている」設定に自ら負けた男


男性参加者の中でもとりわけ異彩を放っていたのが、美容系インフルエンサーの瀬戸口弘樹。昨今の男性の美意識の向上をわかりやすく体現した、「メンズ美容」時代の風雲児だ。

実際に、真夏の海辺に繰り出す時も、日焼けしないように長袖のパーカーを着用し、日傘をさす徹底ぶり。いかなるシーンでも“美容好き”を貫き通していた。

そして中性的な雰囲気をまといながらも、自称“オラオラ系”。このギャップをアピールポイントにしているようだったが、正直その世界観はいまひとつ掴みどころがなかった。
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文=藤田佳奈美 編集=石井節子

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