リアルな決断に至った彼女、至らせた彼ら
萌子は番組内で「(私のことが好きという)自信を持たせて欲しい。本当に思ってくれているか」と発言していた。
このことから萌子は、自分に向けられた愛を確信してからではないと付き合えないことは明白だった。萌子が欲しがっている愛の形を見抜けた男性参加者は、少なかったのではないだろうか。
「まずは付き合うことから始めよう」と考えているだろう男性参加者との温度差も感じた。萌子はこの「旅」でカジュアルな付き合いを求めていない。お試し感覚でお近づきになろうという男性のスタンスは、萌子の価値観やビジョンに反する。仕方のないことだが、男女関係において価値観の違いは致命的だ。
このことからもわかるように、プロデューサーはおそらく、バチェロレッテ選び以上に、彼女を競い合う男性たちのキャスティングにもっとも頭を悩ませたはずだ。萌子と同じ目線に立てる男性はそういない。
元準ミスジャパンの容姿、並外れて裕福な家庭環境に育ったがどこかストイックな意外性もある彼女を「完璧」「女神様」として崇め奉る男性陣もいたが、それは恋心より理想や憧れに近く、リアルな彼女を見ていたのか疑問が残る。自分の中で理想が膨れ上がり、実際の萌子との乖離が生じ、心の距離を男性自らとってしまったのではないだろうか。
また、萌子の将来を見据えた本気の思いに対して、“圧”を感じ心を開くことができなかった男性陣もいたのではないか。
あの時、あの瞬間、男性陣はどういうアクションを起こせばよかったのか。なぜ選ばれなかったのか。どうしたら選ばれていたかもしれないのか。
とりわけ萌子と距離を縮めることができなかった男性参加者をピックアップして考察してみる。
ケース1 「男女関係のPDCAサイクル」を回せない男
まずは映像クリエイターの下山裕貴。海に魚を獲りに行くもヒトデを獲ってくるなど、やや頼りなさはあるがチャーミングな一面を見せたのが印象的だった。だが、第3話で離婚歴があることを明らかにした。
離婚理由は下山の不倫。彼は離婚を経て、自分と向き合うために今回の旅に参加したことを萌子に打ち明けた。
その後、男性が選別されるローズセレモニーを前に下山は、「やっと萌子さんに話すことができた。伝えたいことが伝えられたと思うので、落ち着いている気持ちが強い」と語っていた。
この一連の流れは、「隠し事をしたくない、正直でありたい」という下山の一方的な誠意と、早く打ち明けてスッキリしたいというひとりよがりな思考が際立つ結果となり、ローズを渡されることなく下山は脱落した。