これに対し、10月22日、日本産婦人科学会の木下勝之会長が記者会見を行い、処方箋なしでの薬局販売への反対意見を述べた。理由として、緊急避妊薬に対する女性の知識不足、性教育の不備、濫用の不安、産婦人科だけでない他科診療でも手に入る仕組みができること、などを挙げ、「時期尚早」とした。しかし、避妊の失敗や性暴力などによる妊娠を防ぐのは、時間とのたたかいだ。
実際、産婦人科医や、性暴力被害者支援、虐待やDV相談など、望まない妊娠についての相談を受ける現場からは、その「アクセスの悪さ」を指摘する声が相次ぐ。
ちょうど、妊娠葛藤相談の窓口を運営するNPO法人ピッコラーレが「project HOME(以下、HOME)」という、居場所のない妊婦のための事業を開始し、彼らを受け入れる“家”を開設したというので取材した。
ピッコラーレ代表の中島かおりさん、事務局長の小野晴香さんに、「医療システムの中での妊娠出産」だけでは見えてこない女性たちの話を聞いた。妊娠を取り巻く女性たちの葛藤、背景や課題など、「相談」を通して見えるものはなんだろうか。
性の悩みを誰にも相談できず、孤立する若者たち
ピッコラーレが運営する妊娠葛藤相談窓口「にんしんSOS東京」に寄せられる相談内容は多岐にわたる。大きく分けると、(1)妊娠が判明する前の相談、(2)妊娠が判明してからの相談、(3)中絶についての悩み、(4)妊娠継続を決めた後の出産や育児に対する悩み、に分類されるという。
このうち約65%が(1)で、避妊に失敗したかもしれない、生理が遅れている、妊娠したかもしれないという妊娠不安の相談だ。これは全年齢通して圧倒的に多い。特に10代では8割を占めるという。ピッコラーレ代表の中島さんはこう指摘する。
「10代での妊娠というと、性教育が足りないとよく言われます。確かに性教育が不十分とは事実ではありますが、不十分な中でも、彼らは一生懸命情報を探し、知ろうとします。彼らなりに学ぼうとしている。でもその方法が、ネットなんですね。嘘や不正確な情報に触れ、もっと悩んでしまったり、たとえ正しい情報に触れても、それが自分の場合に当てはまるのか、混乱し、私たちの窓口に繋がってきます。相談は、女性だけでなく、男性からもあります」