急逝した稀代の起業家、ザッポス創業者46歳の「早すぎた伝説」

ザッポス元CEOのトニー・シェイ(Photo by FilmMagic/Getty Images)

ネット靴店ザッポス(Zappos)の元CEOのトニー・シェイ(Tony Hsieh)が11月27日、46歳で急逝した。シェイはザッポスを創業する以前に、1996年にオンライン広告企業リンクエクスチェンジ(LinkExchange)を創業し、1999年にマイクロソフトに2億6500万ドル(約276億円)で売却したことでも知られている。

25年以上に渡りテック業界やスタートアップ企業に多大な影響を及ぼしたシェイの死を受け、多くの起業家や投資家が哀悼の意を表明した。

シェイは、世界的ベストセラーとなった著書「Delivering Happiness」(ザッポス伝説)や、カンファレンスでの講演などを通じて、多くの人に影響を与えた。

フォーブスは、シェイと交流のあったセコイア・キャピタルのパートナーであるAlfred Linや、投資企業NeoのCEOであるAli Partovi、Long Journey VenturesのパートナーであるCyan Banisterらにインタビューし、彼との思い出について語ってもらった。

大学時代はピザ店を運営


シェイは、イリノイ州で台湾移民の家庭に生まれ、10代をベイエリアで過ごした後、ハーバード大学に入学してコンピュータ・サイエンスの学位を取得した。大学時代の親友であるAlfred Linは、シェイが創業したLinkExchangeやVenture Frogs、ザッポスなどで勤務し、現在はセコイア・キャピタルでパートナーを務めている。

Linはハーバード時代のシェイについて次のように語った。

大学時代のトニーは、いつも最小の努力で最高の成績を収め、その才能には驚かされるばかりだった。トニーは、大学の寮でQuincy House Grilleという学生が運営するピザ店を運営していた。彼が営業権を取得する以前は、ハンバーガーやミルクセーキしか販売しておらず、シェイは利益率の高いチーズを使ったピザを売ればもっと儲かると考えた。

店の営業権は、1年で後輩に売却するのが習わしだったが、シェイはオーブン代に投資した費用を回収するために2年間営業を続ける必要があると考えた。当時から、彼は慣習にとらわれず、独自の信念に基づいて行動していた。営業権を取得するに当たり、私はトニーに、「2年間営業するのは良いが、営業権を取得できる保証はあるのか?」と尋ねた。すると彼は、「君だったらいくらで入札する?」と聞いてきた。

私が、「最高入札額に1ドルを上乗せした金額かな」と冗談半分で答えると、彼は、「ちょうどその金額で入札してきた」と言い、実際に落札することに成功した。冗談のようなことでも、彼が実行するととても優秀に見えた。
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編集=上田裕資

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