ビジネス

2020.12.09

ベトナムの「巨大な街づくり」から見えるビジネスの要諦

ビンズン省庁舎を中心に、住まいや公園、学校、ショッピングセンターなどが続々と建設されている。

東京ドーム約200個分となる1000ヘクタール規模の街づくり。今の日本では到底考えられないこの桁違いなプロジェクトをベトナムで行なっているのが、東急田園都市線沿線を開発、発展させてきた東急グループだ。長年にわたり培ってきた街づくりのノウハウを最大限に活用し、新たなビジネスチャンスを切り拓いている。

今回はコロナ禍の中、現地でプロジェクト推進の現場指揮を執るべカメックス東急の平田周二氏に取材。そのダイナミックな事業展開から見える、これからのビジネスの要諦について聞いた。

──まず、プロジェクトの概要を教えてください。

ベトナムのホーチミン市から北に約30km離れたビンズン省というところで、2012年に現地省政府傘下企業の「ベカメックスIDC」と合弁会社を作り、街づくりを推進しています。

ビンズン省は巨大な工業団地をいくつも有しており、経済的には非常に恵まれている地区です。しかしながら、今後はそれだけではなく、街を作ってサービス産業を伸ばしていかないと成長が見込めないという見立てから、日本で同じようなビジネスモデルを確立してきた東急に白羽の矢が立ちました。

東急としても、今後日本の人口減少、それに伴う沿線人口の減少も予想される中で、新たな地平を切り拓くことを検討していた状況でしたので、両者の思惑が一致しました。都心から程よく離れた土地柄が、ちょうど東急多摩田園都市と重なり、イメージしやすかったということもあります。

──ベトナムは中国や韓国の投資が盛んですが、競合はいなかったのですか?

ビンズン省も海外、国内問わずパートナーを探しており、いくつか候補もあったようです。しかし、東急のように電車やバスといった交通事業を基軸として、不動産、ショッピングセンター、ホテル、通信事業まで、総合的に手がけ、100年近くの歴史を持つ会社は世界でも稀だったようで、熱烈なオファーをいただけました。

海外では電車やバスは公共で、民間の鉄道会社が街づくりまでを行なっているケースは珍しいんですよ。今後アジアの発展途上国の開発が進み、国際競争が激化してく中で、このビジネスモデルは日本のアドバンテージになると思います。

──2012年の進出後、どのように事業を展開されてきたのでしょうか?

最初に「ソラ・ガーデンズ」というマンションを作り、その後、フードコート、公園や戸建ての低層住宅エリアを展開し、学校や病院の誘致なども行いました。また、交通インフラを整えるべく、街にバスを走らせました。最近では三菱地所レジデンスやNTT都市開発と共同でプロジェクトを行うなど、徐々に協力してくださる日本企業さんも増え、開発がさらに加速しています。


「ソラ・ガーデンズ(右)」と、現在建設中の三菱地所レジデンスとの共同プロジェクト「ソラ・ガーデンズII(左)」。

「ソラ・ガーデンズ」は2015年に竣工しましたが、当初は販売が伸びずに苦戦しました。東急の知名度もゼロからのスタートですし、我々が提供する価値をベトナムの方々に伝えきれなかったんですよね。

しかし、1号物件が竣工してからは、物件の施工や運営のクオリティの高さを理解して貰えています。最近販売を開始したマンションは、引き渡し前に全室完売するようになり、手応えを感じているところです。
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文=国府田淳

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