Tang Ming Tung / by Getty Images

米疾病対策センター(CDC)と米赤十字社などの研究者からなるチームが先ごろ、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が2019年12月にはすでに米国内に存在していた可能性があることを確認したと発表した。

研究チームは2019年12月から2020年1月までに献血された血液のサンプルを調査。その結果を米医学誌「臨床感染症学」に発表した。それによると、これまで考えられていたより数週間早い時期、中国・武漢で最初の感染例が報告される前から、米国には感染者がいたとも考えられるという。

米国で初めて感染者が確認されたのは1月19日。だが、発表された論文によれば、昨年12月中旬にカリフォルニア、オレゴン、ワシントンの各州で採取された血液のサンプルには、新型コロナウイルスの抗体検査で陽性の反応を示すものがあった。

また、コネチカット、アイオワ、マサチューセッツ、ミシガン、ロードアイランド、ウィスコンシンの各州で今年1月、国内の感染者が確認される前に採取したサンプルの中にも、陽性の結果を示すものがあった。

論文の著者らは、今後も引き続き、SARS-CoV-2のパンデミックについての分析を行うため、政府や民間のパートナーと協力し、保存されている血液サンプルの調査を行っていく方針だという。

パンデミックがいかに初期段階から現在の世界的危機の状況にまで進行してきたのか明らかにすることは、感染や死亡を防ぐためのより適切なリソースの配分について、公衆衛生の専門家らが判断するための役に立つとの見解を示している。

結果に疑問の声も


一方、ヒトの血液中に抗体が存在するということは、過去にその病原体(この場合はSARS-CoV-2)に暴露していたことを意味するものではあるが、この研究において使用された検査方法は、正確な結果を得るには十分なものではないとの指摘もある。

この調査で実施した検査は、類似した別のコロナウイルスの抗体を検出している可能性がある。コロナウイルス科のウイルスには、風邪の原因となるものなど、数多くの種類が含まれている。SARS-CoV-2以外のコロナウイルスへの感染が、抗体検査での陽性反応を誘発したとも考えられる。

これは、研究チームも認めているところだ。チームはこのリスクを最小限に抑えるための措置を講じた上で調査を実施しているものの、この可能性はゼロではないという。こうした不確実性を理由として、SNSでは多くの研究者たちが、この論文の結論に疑問を投げかけている。

政治問題化されたパンデミック


SARS-CoV-2は2019年後半に、動物からヒトに感染したと考えられている。だが、その起源は今のところ、大部分が謎に包まれている。ヒトへの感染は、中国・武漢で同年12月に最初に報告された。

このウイルスの起源の解明が、政治問題化されてきたことは言うまでもない。ドナルド・トランプ米大統領など一部の政治家たちは、SARS-CoV-2の感染が広がったことについて、中国には賠償責任があると主張している。そして、英ガーディアンによれば、中国は“1周年”が近づいたころから、非難の矛先を他国に変えるための宣伝攻勢を展開している。

世界保健機関(WHO)はその発生源を特定するため、武漢に調査チームを送ることを検討しているところだ。

編集=木内涼子

新型コロナウイルス特集
VOL.609

新型コロナ対策、「検温」に頼ってはいけない理由

VOL.611

新型コロナ感染拡大、ワクチン承認だけでは楽...

PICK UP

あなたにおすすめ