ビジネス

2020.12.06

年収1億円のカメラマンも オンライン講座「Udemy」の破壊力


バリと共同創業者2人は200人以上の投資家から出資を断られた後、10年に米国で「Udemy」を自力で設立した。ちなみに「Udemy」とは“you”と“academy”を組み合わせた造語である。

エドテック(Edtech:教育テクノロジー)分野の投資会社「ユニバーシティ・ベンチャーズ」の共同創業者ダニエル・ピアンコも「突拍子もないアイデア」だと感じたと話す。というのも当時、オンライン教育はフェニックス大学をはじめとする、教育機関の認定を受けた営利目的の大規模大学が独占していたからだ。だがピアンコは、いまではUdemyへの投資機会を逃したことを悔やんでいる。

「大学に属していなくても講師になれるなんて、今にして思えば、すごく画期的でした」

Udemyが最初に立ち上げた講座は、「オンラインポーカーでお金を稼ぐ方法」や「女性をナンパする方法」だ。だが創業者たちはすぐに悟った。ユーザーが真に求めているのは、コーディングやデータ分析、チームビルディングなどのビジネススキルだったのだ。現在、Udemyでは3分の2をこうした講座が占めている。ただし、新型コロナのパンデミック下で人気を集めている講座は、「似顔絵」や「レイキマッサージ」ではあるが。

競合他社では、講師になれるのは大学教授や厳しい審査をパスした人だけで、応募しても採用されないことが多い。一方、Udemyでは、動画コンテンツは30分以上でなければならないなど、6項目の最低要件を満たせばよい。講座のテーマも、性描写や武器、ヘイトスピーチなど、禁止トピック以外であれば何でもいい。トップ講師の中には年間100万ドル稼ぐ人すらいる。年間10万ドル以上の収入を得ているのは数百人だが、今年はその数が2倍になる可能性があるという。

テレサ・グリーンウェイ(61)もそうした一人だ。高校中退のテレサは10人の子ども(息子の1人は自閉症)を持つシングルマザーである彼女の「パン作り講座」は今年5月、1万2400ドルの収入を得た。21歳で結婚し、10年前にDV(家庭内暴力)が理由で離婚。「学歴も職歴もない私に何ができるのかと、精神的にボロボロだった」というが、15年にUdemyを知り、「自家製酵母パンの作り方」という3時間のコースを作成した。

現在、テレサは13のコースを持っており、アマゾンで自費出版した8点の著作という新たな収入源も得た。それでも、彼女の19年の収入7万8000ドルの大部分はUdemyの講師料であり、今年は2倍になる見通しだ。

グレッグ・コッカリがUdemyのCEOに就任したのは19年。コッカリはペンシルベニア大学ウォートン校を卒業後、数々のスタートアップでCEOを務めてきた。

今年2月、コッカリ率いるUdemyはベネッセホールディングスからの5000万ドルの資金調達に成功した。今回の資金調達で累計資金調達額は2億ドルを超え、企業評価額は前回調達時の7億1000万ドルから20億ドルへと跳ね上がった。パンデミックによる行動制限が他国に比べて少ない日本でも、Udemyの20年1〜5月期の売り上げは前年同期の3倍になったという。

オンライン学習の支援者であり、エドテック分野のベンチャーキャピタル「GSV Ventures」でシカゴを拠点に活動するデボラ・クアッツオは、26年にはオンライン学習の市場規模は1兆ドルに達すると見ている。それはコロナ禍以前の彼女の予想を2倍以上も上回る額だ。
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文=スーザン・アダムス イラストレーション=Kouzou Sakai 翻訳=岡本富士子(パラ・アルタ) 編集=森 裕子

この記事は 「Forbes JAPAN Forbes JAPAN 10月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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