ポストDXの世界

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「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という言葉を聞かない日はないぐらい、世の中は今この言葉で溢れている。メディアの記事、ビジネスカンファレンス、採用情報、そして多くの企業の会議の中でも、この言葉が沢山使われているのではないか。

企業を主語とした「DX」という言葉の定義もさまざまだ。それは、「デジタル技術を活用し、ビジネスモデルや組織や企業文化などを変革する」ことであり、「その戦略」や「その変革によって優位性を確立すること」と定義されることも多い。さらにそこに「顧客視点で新たな価値を創出する」というニュアンスが加えられることもある。

「IT化」と「DX」の違いは、まさに言葉通りトランスフォーメーション、意訳すると「変革」することにある。主にデジタル化することで効率化やアナログのリプレイスを図った「IT化」の先に、さらにデジタルテクノロジーを活用してビジネスモデルや会社組織を変革しようというのが「DX」だ。

この「DX」と共に語られるテクノロジーとしては、インターネットはもとよりクラウド、AI、ブロックチェーン、XRなどがあり、さらにこれからの最先端技術もそこに加わっていくだろう。そしてこれらのテクノロジーの中で私が少し「ひっかかる」のが、ブロックチェーンだ。


DXと共に語られる「ブロックチェーン」とは?


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ブロックチェーンは暗号資産(仮想通貨)を動かすテクノロジーである。その元となるアイデアは1990年代には誕生していたが、2008年にサトシ・ナカモトと名乗る人物(団体かもしれない、その正体は未だ明らかになっていない)が暗号学者のメーリングリストで発表した論文「Bitcoin:A Peer-to-Peer Electronic Cash System」がきっかけとなり、現在のように世界中に広がることになる。

この論文で暗号学的証明に基づいた電子取引システムとしてのビットコインが発明された。

ビットコインは取引台帳を参加者みんなが管理し、その管理方法にP2Pや暗号学的技術と経済合理性に基づいたインセンティブを付与することで、改ざんや二重支払のリスクのない、そして過去から未来までの取引を全て正確にトレースできる、トラストレス(誰も信用しなくても使える)な「お金」のプラットフォームだ。ビットコインはブロックチェーン技術を使って、国や銀行が管理しなくてもみんなが使える「お金」を実現したのだ。

このような歴史的な背景から考えると、ブロックチェーンは非中央集権的な、分散化した仕組みを実現するテクノロジーといってもいいだろう。そんなテクノロジーであるブロックチェーンが「DX」と共に語られているのだ。

今まさに「DX」を推し進めようと取り組んでいるのは、ブロックチェーンが壊そうとしていた中央、つまり国や企業だ。もしサトシがこの話をどこかで聞いたら微笑んでいるかもしれない。

文=設楽悠介 編集=石井節子

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