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「常識を疑う」「前提を疑う」ことは、自由な発想、客観的な視点のために必要な態度であると考えられている。経営学を修めようとする人たちがまず学ぶあの「クリティカルシンキング(批判的思考)」でも、「疑う」は中核となる思想だ。

だが、こと「人を疑う」に関しては、どうだろう?

チームメイトを疑うことが「コスト」でしかないことにいち早く気づき、「疑う」をやめて成功している企業がある。グーグルだ。

グーグルはGAFAの中でもとくにフラットな組織というイメージが強い。アマゾンが究極の顧客中心主義(カスタマー・セントリック)な企業であるとするなら、グーグルは徹頭徹尾なプロダクト・ドリブン企業であり、階層や人的管理の入り込む隙もないといわれる。そして彼らはその「フラットさ」を武器に成長し得た、と言っても過言ではないようだ。

実はそのフラットさをさらに加速させているのが、「心理的安全性」に基づいたチームづくりだ。そして、それは社員がお互いに疑うことをやめてこそ実現するという。

アマゾン ジャパンを経てグーグルに転職、3年前から米国グーグル本社に勤務するS氏に話を聞いた。

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チームに必須なのは、「心理的安全」の担保


「グーグルでは“psychological safety”、直訳するなら“心理的安全”という考え方を社内で使っていますね」とS氏は言う。

グーグルにおいて「心理的安全」とは、「互いの前で安心してリスクを取り、隙を見せることができる状態」と定義されている。

同僚やチームの仲間を「疑う」ことをやめ、信じ合う前提に立つ。疑う必要がなくなれば、リスクや反対意見を恐れず、自由に発言しやすくなる。こうした心理的安全が確保されることで、合理的、分析的、創造的な思考が加速し、チーム全体のパフォーマンスが向上するというポジティブループが醸成される。

ここでいう「心理的安全」という考え方は、ノースキャロライナ大の心理学者バーバラ・フレデリクソン氏の研究に立脚したものだ。彼女はポジティブ感情に関する「拡張-形成理論」 で、「『安全だ』と感じる時人は広く心を開き、より柔軟になり、モチベーションを高める」ことを証明した。

つまり、協力的な人間関係下でポジティブ感情が育まれ、「安全」と感じられる状態にあってこそ、ビジネスで生じた複雑な問題の解決が可能になるという考え方だ。

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ちなみに「safe(安全)」は「comfort(心地がよい)」とは違う。たとえば優秀なフィットネストレーナーは、われわれを「安全に」エクササイズさせて結果を出させる。そのエクササイズは心地よくはないが、完璧に安全(無害)だ。リーダーも同じで、彼らの仕事はチームを不快にしないことでなく、「害」から守ることだ。リーダーは不快感をかきわけ、安全な環境下でチームをモチベートするべきなのだ。

取材=石井節子

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