アスリートというキャリアは特殊だが、異業種や海外への挑戦へのノウハウやマインドセットはビジネスパーソンのヒントになるはずとの思いから、二人を取材。3本目の本記事は、就職面接の経験、副業とのバランスについて。(1回目、2回目の記事はこちら)
複業でレバレッジをかける
竹崎孝二(以下、竹崎):複線形のキャリアについてお伺いします。酒井さんは本業の他に、Udemyの講師やYouTubeでの情報発信をされていて、阿部さんも本業とは別にSPORT GLOBALを立ち上げられましたよね。副業が良い効果を生むのはどのような場合なのでしょうか。また、本業と副業の位置付けの違いについても教えてください。
酒井潤氏(以下、酒井):私が副業を始めた理由のひとつは、アメリカでは常に解雇リスクがあるからなんです。それに、ウーバーが出てきてタクシー会社が潰れたり、エアビーアンドビーが出てきたらホテルが潰れたりする様子を見ていると、私の本業はITですが、その業界だけ、1つの専門性だけに依存するのはリスクが大きいと感じます。
ただ、キャリアが1〜2年の状況で副業を始めても、アルバイトみたいになってしまうので、軸を確立してから始めるのが良いのではないでしょうか。私の場合、今はITエンジニアとしての軸がある程度固まったので、Udemyでプログラミングを教えるという副業を始めました。
本業の仕事がいずれは副業に、あるいは副業がいずれ起業に、というように、それぞれが延長線上でつながるようなキャリアプランを意識していて、同時に、チャレンジは大切ですが、博打をするのではなく、「スプーン一杯」のリスクをとることを心がけています。
阿部博一氏(以下、阿部):酒井さんは本当に戦略的ですよね。僕はそこまで明確なプランはないのですが、今所属しているAFCが2年契約を更新していくスタイルで、かつ平均するとみんな10年経たないうちに転職していくんです。そのため、この仕事は永遠ではないという前提をもとに、他のこともやっておかないとという思いがあります。
それに、FIFAの大陸連盟であるAFCは、非営利団体なんですね。今の状態に慣れると「商売する力」が衰えるという危機感をもっているので、お金を稼ぐ力や感覚を忘れないためにも、副業を行っています。そこで得たスキルや人脈は本業にも活きてくる。とは言っても、全てが成功するわけではなく、過去には立ち上げてみたけど全く儲からずに止めた事業もありました。ただ、やってみて初めて分かることも多いので、失敗も勉強になります。