パンデミックでも強みを発揮。全米注目、非石油系の物質が地球を浄化

左)ショーン・ハント、右)ゴーラブ・チャクラバーティ


ソリュージェン製品が非石油由来だった点は、“ナチュラル志向”が売りのスパにとってはありがたい要素だった。加えて、従来の化学洗浄剤より効果が高かったことで顧客が定着した。ソリュージェンの生物由来の酵素による過酸化物生成の過程では、同時に有機酸が生成される。この有機酸に、配管を詰まらせたり腐食させたりするミネラル分の蓄積を洗い流す作用があったのだ。

スパ向けのクリーニング製品はニッチな事業でそれなりにうまくいったが、チャクラバーティとハントにはもっと大きな計画があった。17年の冬、2人はシードアクセラレーターの「Yコンビネーター」のプログラムに参加。同じ年にはウェットティッシュメーカーの「ダイヤモンド・ワイプス」と契約を結び、新しいブランド「オーディ・トゥ・クリーン」を立ち上げた。ダイヤモンドが植物由来のでんぷん製で生分解性のウェットティッシュを製造し、ソリュージェンが過酸化水素水とマーケティングを提供するという事業だ。チャクラバーティは言う。

「あれは僕らにとっては“トロイの木馬”だったんだ。目的はブランドを売り込み、サプライヤー契約を獲得することだったんだよ」

古代ギリシャの英雄叙事詩『イリアス』に登場するトロイの木馬と同様、2人の計画は成功した。18年の秋、油田関連サービス大手「シュルンベルジェ」から引き抜いた営業担当の“セールスマン”の力を借り、排水浄化製品を石油掘削企業に売り込むことに成功したのだ。そしてソリュージェンは18年夏にはウェットティッシュ事業から撤退、オーディ・トゥ・クリーンはダイヤモンド・ワイプスが1000万ドルに満たない額で買収した。

パンデミックの最中でも強みを発揮


18年9月には、ソリュージェンはより大きなスペースを必要とするようになっていた。1900万ドルの資金調達ラウンドが進行中で事業拡大の費用をまかなう現金もあったことから、ハントは商業用不動産サイトでヒューストン地域の物件を探し、廃業した化学製造工場を見つけた。

それは石油からプラスチックを製造していた工場で敷地は約2万平方メートル、使用可能な配管やタンクが残されていて、二酸化炭素の排出を相殺するために約4000平方メートルのリンゴとナシの果樹園まで備えていた。

ソリュージェンはこの工場を約300万ドルで買った。生産能力は現在、1週間でタンクローリー約1台分(約4000ガロン)で、さらに1日当たりタンクローリー複数台分まで増強しようとしているところだ。
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文=アレックス・ナップ 追加取材=クリストファー・ヘルマン 写真=フィル・クライン 翻訳=木村理恵 編集=森 裕子

この記事は 「Forbes JAPAN Forbes JAPAN 10月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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