新型コロナウイルスのパンデミックとの闘いを特に優先し、トランプの遺産は時間をかけて徐々に取り払っていく方針とみられる。
米紙ニューヨーク・タイムズのインタビューでバイデンは、「1000万以上の人たちが、次の住宅ローンの支払いができるかどうか心配している」と述べ、新型コロナ感染者の急増が続くなか、議会で経済対策法案を通過させることが当面の優先課題だと強調した。
一方、バイデンは今後の対中戦略について、「すぐに行動を起こすつもりはない。関税についても同じだ」発言。まずは現行協定の見直しを行い、アジアと欧州の同盟国と協議していく考えを示した。さらに、“最善の対中戦略”は「米国の同盟国(または、少なくとも以前はそうだった国)のすべてが、大筋で合意できるものだ」と述べている。
中国からの輸入品のうち、トランプが25%の関税を課している製品は全体のおよそ半分にのぼる。トランプのこうした反中国キャンペーンには、米国の最も強力な同盟国さえ参加していない。
米政府は今年1月、「第1段階」の合意として、中国が米国製品の輸入量を増やすことを条件として、一部の中国製品に課していた関税の引き下げに合意した。だが、中国がこの約束を果たすのに苦労していることは、すでにデータによって明らかにされている。
バイデンは、中国への対応には「レバレッジ(影響力)」が必要だと発言。自身の見解では、米国には現在、そのレバレッジが欠けていると指摘した。
大統領選前のキャンペーン中から、バイデンはトランプを手本としたような「米国製」重視の経済政策を打ち出していた。トランプが示す北米自由貿易協定(NAFTA)や環太平洋パートナーシップ協定(TPP)などを批判する姿勢は支持している。
ただ、こうしたことで民主党は、バーニー・サンダース上院議員(無所属、バーモント州選出)など保護主義的な貿易政策を求める進歩派からの圧力にも直面している。
バイデンはニューヨーク・タイムズのインタビューでもトランプが頻繁に繰り返す言葉を用い、「私たちは間違いなくアメリカ・ファーストに投資を行い、死に物狂いで戦っていく」と主張。
また、「米国とわが国の労働者への大規模な投資を行う前に、どの国とも新たな貿易協定を結ぶつもりはない」と語っている。
イラン核合意には復帰の考え
バラク・オバマ前米大統領が実現させたイランとの核合意についてバイデンは、復帰する考えを変えていないことを明らかにしている。トランプは2018年、一方的にこの合意から離脱していた。
バイデンは9月、CNNへの寄稿のなかで、「イランが再び核合意の内容を厳守するなら、米国はその後の交渉に向けての出発点として、合意に復帰するだろう」と述べている。