光文社の書籍から読みどころをピックアップ。本好きな人たちのためのコンテンツ。

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コロナ禍により、多くの性風俗業者の売り上げが落ち込んだ。また、そこで働く人々の生活も苦しくなっている。

世間からの偏見の目もまだまだ根強いなか、今回の未曾有の事態がますます追い討ちをかけ、働く人たちの生活への支援はどうするべきかなど、性風俗業界にまつわる議論は絶えない。

風俗嬢の見えない孤立』(光文社新書)の著者である角間惇一郎氏は、大手ゼネコン企業で建築士として働いたのち、2年間、性風俗店に勤めながらキャストの実態調査を実施。これまでに5000人以上の風俗嬢と関わった経験を持つ。

以下、同書から一部引用し、なぜ風俗嬢は「夜の世界」から足を洗えないのか、その理由を紹介する。


「早くやめさせればいい」というわけじゃない


はじめまして。僕、角間惇一郎は、「夜の世界の課題解決」に取り組む一般社団法人GrowAsPeople(以下、GAP)の代表理事です。2010年から7年、夜の世界の中でもとりわけ、性風俗産業に従事する女性......一般的に「風俗嬢」と呼ばれる方々の相談事業、就労支援を行ってきました。

GAPは、風俗嬢の女性たちにどんなサービスを提供しているのか。まずは、本人の希望を元に、GAPが提携している企業やNPOでインターン経験を積んでもらう。そこで履歴書に書ける職歴やスキルを身につけさせ、ゆるやかに昼の仕事に移行してもらう。この方法で、今までに40人ほどの就労支援を行ってきました。

「いつかはやめる」だなんて悠長なことをいっていないで、風俗の仕事なんてすぐにやめさせればいいじゃないか。みなさんの中には、そう思われる方も大勢いらっしゃると思います。そうした考え方が、むしろ多数派でしょう。僕もGAPの活動の中で、よくこんな意見をぶつけられてきました。

「風俗の仕事なんて、女性にとってはリスクしかありません。ただちにやめさせるべきです。転職先ならいくらでも斡旋はできます」

僕に対してそう力説するのは大抵、女性の人権についての活動をしている方です。性風俗産業は性的搾取のビジネスであり、女性に対する人権侵害だから、一日でも早くやめさせなければいけない。彼・彼女らは、そうした主張を持っていることが多いです。

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そうした考え方の人には、僕たちの「時間をかけて昼の世界に移らせる」という支援方法が、かなり風俗に対して肯定的、つまり人権侵害的に見えるだろうとも想像がつきます。しかし、僕たちはそれでも、「すぐにやめさせる」支援はしません(もちろん搾取型は別です)。

これには明確な理由があります。昼の仕事にいきなり転職させると、ほとんどの女性はまた、夜の世界に戻ってしまうのです。これは、風俗の仕事を副業ではなく本業にしている人に顕著な傾向です。

僕も夜の世界に関わり始めた当初は、「すぐに転職できるなら、それにこしたことはないだろう」と考えていました。そうやってすばやい転職の後押しをしたこともありますし、さっさと転職先を見つけ、さっさと夜の仕事をやめる女性も多数見てきました。彼女たちのことは、むしろ「成功例」だと思っていたものです。

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