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「007 ロシアより愛をこめて」(1963年)

世界興行収入:7890万ドル 製作費:200万ドル

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「007 ロシアより愛をこめて」のショーン・コネリーとダニエラ・ビアンキ

テレンス・ヤング監督は、このシリーズ第2作を現実のスパイ活動と誇張されたアクションをうまく融合した映画に仕上げた。ジョン・F・ケネディ大統領が「007/ロシアから愛をこめて」をお気に入りの小説の1冊に挙げたことでイアン・フレミングの小説の売上げが伸びたことや、1963年11月にケネディ大統領がダラスに旅立つ前に見た最後の映画が本作であったことはよく知られている。

トリビアはさておき、この作品がいまでも変わらず最良の1本であり、ショーン・コネリー出演作7本のベストであるのは間違いないところだ。

この映画が前作の「007 ドクター・ノオ」の続編として作られたことは、はっきりした関連性(ケープ・カナベラルにおける宇宙ロケット打ち上げをめぐる陰謀をボンドに邪魔され、腕利きの工作員を放射能プールに突き落とされたのを面白く思っていないスペクター)だけでなく、このまったく別の物語に前作の登場人物を加えたことでも明白である。

スペクターは、祖国ロシアのためと思い込んでハニートラップを仕掛ける若い領事館職員(ダニエラ・ビアンキ演じるタチアナ・ロマノヴァ)を利用して邪魔なスパイを始末する計画を立て、ドクター・ノオの復讐をしようとする。

MI6(秘密情報部)は罠であるのを承知のうえで、その裏にある狙いを突きとめるためにタチアナの亡命要請を承認する。その結果、当然ながらタチアナはボンドに恋するようになり、ロバート・ショウ演じる“レッド”・グラントとの列車内での熾烈な戦いの場面へとつながっていく。

現実とファンタジーのバランスが見事にとれたこの映画は、ティモシー・ダルトン主演の「007 リビング・デイライツ」が作られるまでは最も“スパイ映画らしい”プロットの作品であり、クライマックスではスリル満点のアクションシーンがこれでもかと言わんばかりに(列車で、ボートで、空で、ホテルの部屋で)次々と展開する。

そうした息もつかせぬクライマックスが、若きスピルバーグやルーカスに影響を与えなかったはずがない。シリーズ初期の「ヒッチコック映画を骨太にした」作風を見事に打ち立てた作品でもある。コネリーのボンド映画のベスト(ある程度は助演陣の奮闘のおかげだが)であるのはもちろん、全シリーズのなかでも最良の1本と言える。単独の映画としても優れた出来だから、もし007映画が数本で終わったとしても、画期的なアクション・スリラーの古典として生き延びたはずだ。

翻訳・編集=中田しおみ/S.K.Y.パブリッシング/石井節子

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