ショーン・コネリーの「ボンド映画」7選 最高の名作は?

見つめ合うショーン・コネリー演じるジェームズ・ボンドとオナー・ブラックマン演じるプッシー・ガロア。1964年公開の「007 ゴールドフィンガー」から。(Photo by Keystone-France/Gamma-Keystone via Getty Images)


「007 ドクター・ノオ」(1962年)

世界興行収入:5960万ドル、製作費:100万ドル

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「007 ドクター・ノオ」で、カジノのカード・テーブルに坐るショーン・コネリー(中央)。監督はテレンス・ヤング。赤いオフショルダーのドレスを着てカメラに背を向けているのは、英国人女優のユーニス・ゲイソン。(Photo by MGM Studios/Courtesy of Getty Images)

この作品からすべてが始まるわけだが、それはとりもなおさず、いくつかの要素がまだ欠けていることを意味する。秘密兵器はほとんど出てこないし、Qも存在せず(Q役のデスモンド・リュウェリンは次作の「007 ロシアより愛をこめて」で初めて登場する)、シリーズの名を高めた奇抜な発想はほんのわずかしか見られない。

それでもテレンス・ヤング監督の無駄のない、暴力的で、ときには無慈悲とさえ言えるこのアクション映画はツボを押さえており、ヒッチコック流の「間違えられた人間が逃げ回る」伝統的なプロットを採用し、責任感あるアクション・ヒーローをその中にはめ込む手法をとっている。ショーン・コネリーはこの1作目からすでに無頓着な残虐さと、超然としたプロ意識を身につけている。

007映画に出てくる男女の出会いは、この1作目から合意に基づくセックスだけの関係(ユーニス・ゲイソン演じるシルビア・トレンチは初めから心の結びつきなど期待していない)か、セックスが殺人の前奏曲となるハニートラップである。

ピアース・ブロスナン主演作品がそうであるように、この作品も後半に現実離れしたメガヒット映画に欠かせない展開になる前は、失踪した工作員とジャマイカで発覚した陰謀というプロットの、地に足のついた現実的なスパイ映画として進行していく。火炎放射器を装備した戦車が登場するまで、アクションが多めのスパイ映画と勘違いして見ている人もいるかもしれない。

始まってだいぶたってから、秘密の要塞にいるジョセフ・ワイズマン演じる敵役のドクター・ジュリアス・ノオが登場し、アメリカとソ連を戦わせるために宇宙船の発射を妨害する計画が明らかになってようやく、この映画が「寒い国から帰ったスパイ」とはまったく別物であるのがわかる。

もともと007映画の中では現実の世界をより多く取り入れた一作ではあるが、主演俳優の演技のうまさもあって単独の作品としても良くできている。観客も、このシリーズが徐々に形を成していく現場に立ち会う喜びにひたることができる。
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翻訳・編集=中田しおみ/S.K.Y.パブリッシング/石井節子

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