バイデン大統領誕生と分断構造

11月3日に投票が行われたアメリカ大統領選挙は、激戦州での開票作業に時間がかかり4日後午前になって、民主党ジョー・バイデン候補の勝利が確実となった。最後まで争っていた、アリゾナ、ネバダ、ジョージア、ペンシルベニアの4州では、未開票で残っていた郵便投票の開票が進むにつれて、バイデン氏のリードが拡大、あるいはトランプ大統領のリードを逆転して差を広げているので、このまま勝利が確定するだろう。

トランプ大統領は、郵便投票は不正の温床として郵便投票を無効にするように主張、またいくつかの州では数え直しを要求すると言っている。トランプ氏が逆転に必要な州すべてで結果を覆す可能性はゼロに近い。

郵便投票は、新型コロナの脅威があるなかで、今回の選挙で、新たに導入する州が増えた。新型コロナ対応を重視した民主党は郵便投票を推奨、共和党は投票日当日の投票を推奨していた。

郵便投票については、州によって有効条件が異なっている。さらに、郵便投票分の開票手順が異なっているために、激戦州では結果が出るのに時間がかかり、訴訟リスクを抱えていることになる。例えば、ペンシルベニア州では、郵便投票の有効条件は、投票日かそれ以前の消印があり、投票日の3日後までに到着した票を数えることになっている。

さらに、州議会が、郵便投票の開票は、投票日の対面投票の締め切り以降に開始する、と決定した。その結果、ペンシルベニア州の多くの郡では、投票日の夜には対面投票の開票結果が発表され、そこではトランプ大統領が大きくリードしていた。その後、対面投票の開票が終わり、郵便投票の開票に移るとバイデン氏がじわじわと追い上げて、3日間かけて逆転した。

民主党員が郵便投票を多用したこと、開票の遅れが民主党員の多い都市部(フィラデルフィア市とその周辺、ピッツバーグ市とその周辺)に集中していたことが、この逆転につながった。同様の逆転劇は、ジョージア州で同時に進行していた。
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文=伊藤隆敏

この記事は 「Forbes JAPAN No.077 2021年1月号(2020/11/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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