ポスト・コロナのニューヨークから


創造的な仕事をするには、新しいアイデアをひねり出し、開拓していく時間も必要である。北海道大学の長谷川英佑准教授が「働きアリの法則」を研究し、2割の遊んでいるアリがコミュニティ全体を救う遊軍として存在するとしている。

すべてのアリが同時に働き始めると、短期的には仕事の能率が上がる。しかし、全てのアリが同時に疲れて休んでしまうため、長期的には仕事が滞って、コロニーが存続できなくなることが、コンピュータシミュレーションの結果から確認されているという。

つまり、ガチガチに追い詰めるような管理では、一斉に疲れ果てて、組織が持たなくなる。一見サボっているように見える2割が、いざという時に群れを救う予備部隊として働くというのである。

このことを裏付けるように、意図して遊軍組織や遊びを取り入れている組織もある。グーグルのサイトには、会社での働き方ポリシーが明記してある。

「ビジョンを共有し、失敗を恐れずリスクを取り、OKR(Objectives and Key Results=目標と成果指標)で評価をしつつも、主体性と好奇心を奨励する機会を提供し、エンジニアは、会社の仕事に一応関連しているが自分の主要な職務の範囲外にあるアイデアのために、就業時間の20%を自由に使ってよい」

食事をしながら、飲みながら、ダラダラと話している雑談の最中や、別れ際にポロッと漏らしたひと言から、何かヒントを得ることはよくある。オンライン飲み会など、雑談や立ち話を目的としたミーティングを意図して行うことで、会議形式では得られないものを得ることもできる。

また、組織のためのオンラインビジネス会議とは別種のネットミーティングで、親密度レベルを深めることができる。管理される時間ではなく、アイデアや組織の一体感に結び付く、20%くらいの「ゆとり時間」を意識的に取り入れたいものだ。

2020年は、コロナ禍による死者数だけでなく、自死する人たちの多さも意識せざるを得ない1年であった。CBSニュースでは、日本の自殺者数がコロナの死者数より多いことを報じていた。日本は自殺大国の1つであり、閉塞感に襲われ自死する人が今年はさらに増えているという。

自分でどん詰まりのなかで隠し扉を探すようなことができれば別だが、そこまでの力も無くした人たちの自死を食い止めるためにも、行き詰まりにあっても、身近な少しの笑い、少しの希望、少しの異なるチャンスを与え合うような「ゆとり」を、意識的に持とうとする社会全体の知恵や制度が欲しい。

今年の4月頃はロックダウンしたがゆえに、世界の多くの都市で皮肉にも空気は澄んでいた。この人類が遭遇したコロナ禍という災禍をきっかけに、自分たちの仕事や生活に対する考え方を変えるチャンスなのかもしれない。

連載:ポスト・コロナのニューヨークから
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文=高橋愛一郎

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