選手への指導は徹底的にしたといいます。負けてヘラヘラしていたら怒鳴った。プロの世界では、負けは最大の屈辱だからです。
「弱いチームは、強いチームになるための方法を知らないだけなんです。だから、伝える。うるさい存在ですよ。僕も西武時代、先輩を煙たく思うこともありました。でも、あとから思えばよくわかるんです。なぜ先輩が厳しく言ってくれたか。若いうちに理解していなければ、取り返しがつかなくなるからです」
ある程度の年齢になってしまうと、間違えたと思ってもやり直せないのです。
「人間の潜在能力は、最終的には精神力です。肉体の限界なんて、たかが知れている。肉体の限界が来たとき、精神力でどう能力を引き上げていくか。でも、自分自身で限界に挑むのは、とても難しいんですよね。だから、超えさせてくれる人が必要になる。それが、チームや先輩の役割なんです」
早いうちに厳しい状況に自分を追い込み、精神力を鍛える。これは、若いときだからできるのだと語ります。
「そして、失敗をたくさんする。これも若いからこそできる。いまの若い人は、成功を求めすぎます。すべて成功していたら学べるものは何もない。失敗するからこそ、考え、試行錯誤するようになる。この習慣がレベルを高めるんです。失敗しない限り成功はありません」
なかなかチャンスがもらえないと嘆く人には、こう伝えると工藤さんは言います。
「実は上司は仕事だけを見ているわけではないんです。普段の行動、姿勢、顔つきを見ている。全体なんです。野球界でも、顔を見ていれば、だいたいわかります。仕方なしに、言われるままにやっているようではチャンスはきません」
周囲から何を学ぶか。それを、いかに次につなげていくか。人は、ほんのちょっとしたことで変わります。その先にこそ、何度もの日本一は待っていたのです。
連載:上阪徹の名言百出
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