ビジネス

2020.12.02

治験領域のDX化で「全方位よし」を目指す

(左)萩谷 聡/KVP、(右)猪川崇輝/Buzzreach


萩谷:投資をした理由は、猪川さんがこの治験領域で前社でも14年間取締役として事業をされており、業界のペインの深さや業務の課題をはじめとした事業の解像度が高く、かつ、業界企業からの猪川さんへの信頼が高かったからです。DXは簡単ではなく、製薬企業やCRO、治療施設支援機関(SMO)との関係構築や複雑な業界構造、その課題の詳細を理解してはじめて実現できる。それに猪川さんは起業家として「巻き込み力」もあり、メンバーも集まっていた。シード期では、事業推進力のある経営者であること、そしていい経営チーム、いい組織を作れるかが大事なのですが、その2つをすでに満たしていた。

猪川:萩谷さんからのアドバイスで心強かったのは「ポジティブなことしか言わない」という点。「間違っていない」と自信をつけてくれて、事業の成長の加速着火剤になった。

萩谷:シード期は、事業自体のコンセプト・フィットやプロダクト・マーケット・フィットを目指す段階で、施策のスピードが重要。見据えている未来は確実に来る市場であれば、質の高い打ち手を次々とスピーディーに出せるか。たとえうまくいかなくても「ナイス失敗」。「じゃあつぎに行きましょう」だと。

猪川:世界には、まだまだ治療満足度が高くない疾患分野も多い。今後は、治験に関する業務量を効率化して承認までのスピードを3分の1程度に減らし、計画よりも早く治験を終わらせ、新たな希望をもてる治療薬が患者さんの手元に1日でも早く届く環境をつくること。そして、「MiiLike(ミライク)」で、同じ病気で悩む患者さん同士のコミュニティを介して、許諾を取って集めた声や健康情報を、新しい創薬に向けても製薬会社や研究者に発信していく。そして「こうした悩みを抱えた患者さんがいるのか。治験を計画してみよう」といういい循環を生む。

そういう世界を僕らは目指しています。そして、日本一の患者プラットフォームを、個人ベースで持つ、「エムスリーの患者版」になっていきたい。


はぎや・さとし◎KVPキャピタリスト。東北大学大学院理学研究科修了。2013年KLabに入社。15年10月にKVPに参画。主な投資先は助太刀、souco、ネクストイノベーション、Autify、Synamon、SARAH、シューマツワーカーなど多数。

いのかわ・たかてる◎Buzzreach(バズリーチ)代表取締役CEO。2005年、クリニカルトライアルの立ち上げより参画、取締役を務める。09年クロエ(現3Hホールディングス)の立ち上げより参画、取締役を務める。17年5月に両社を退職、同年6月に同社を創業。

文=山本智之 写真=平岩 享

この記事は 「Forbes JAPAN Forbes JAPAN 10月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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