ビジネス

2020.12.02

治験領域のDX化で「全方位よし」を目指す

(左)萩谷 聡/KVP、(右)猪川崇輝/Buzzreach

日本ベンチャーキャピタル協会が選定した「コロナと戦うベンチャー」の1社で、「テクノロジーの力で一人でも多くの患者さんに新しい選択肢を」をミッションとするバズリーチ。同社は2020年、積極的に次の一手を打ち続けている。
 
バズリーチは、代表取締役CEOの猪川崇輝が17年6月に創業した、製薬企業と患者を直接つなぐ治験情報インフラを展開している企業だ。

製薬企業を中心に展開している治験(臨床試験・臨床研究)の様々な課題を解決する業界特化型SaaSの「puzz」。患者(被験者)向けの治験情報マッチングプラットフォーム「smt」、患者(被験者)向けの治験管理・維持アプリ「スタディ・コンシェルジュ」を提供。また、患者特化型SNSサービス「MiiLike(ミライク)」を提供準備中だ。

そんな同社は20年4月、新型コロナウイルス感染症対策の一環として、製薬会社やアカデミアが、治療薬及びワクチンなどの開発を目的とした治験を行う場合、治験インフラの無償提供を開始。同年6月には、感染回復者とワクチン開発への協力を募るコホートサイトをリリース。同8月には、患者向けサービスにおいて、ディー・エヌ・エーと資本業務提携を発表した。

そのバズリーチに18年12月、シードラウンドで投資をしたのが、萩谷聡がキャピタリストを務めるKVPだ。萩谷はなぜ、猪川率いるバズリーチに投資をしたのか。


萩谷:運命的な出来事があった。ヘルスケア領域のDX(デジタルトランスフォーメーション)は投資領域として関心があったが、バズリーチが手がけている「治験」領域はそこまで詳しくなかった。業界理解と同社への評価を聞くために、製薬会社をはじめ様々な人たちにヒアリングした。その過程で、医薬品開発業務受託機関(CRO)に勤める大学の友人に「バズリーチって知ってる?」と聞いたところ、「うちの会社で使っている。とてもいい」という高評価だったんです。

猪川:「puzz」がまだトライアル期間中で、かつ、ステルスで展開していたので、当時3つのプロジェクトだけしか利用していませんでした。その1つが萩谷さんの友人が担当者として入っていて、しかも、一番うまくいっていた会社だった(笑)。シード期に共通の知り合いがプロダクトを利用して現場の声をくれたのは本当に大きかった。シード期に資金調達する際に「20〜30社VCを回ってやっと決まる」という声を聞いていたので、まさか最初の1社目で、かつ、このような経緯もあり決まるとは思わなかったです。
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文=山本智之 写真=平岩 享

この記事は 「Forbes JAPAN Forbes JAPAN 10月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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