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2020.12.07 07:30

不妊治療の公的助成に拡充の動き。民間の「不妊治療保険」も有効か?

Chinnapong/Shutterstock.com

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人にはあまり言いたくないお金の使い途がある。闘病費用や親の介護にかかったお金、そして不妊治療にかけた費用などだ。数十万円や数百万円は序の口で、1000万円を超える額がかかったという人もこれまでたくさん見てきた。
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そんななか、不妊治療に関して、政府がようやく本格的な助成へと動き出した。今回は、不妊治療にかかる費用の現状と、民間の不妊治療保険について、解説してみたい。

不妊治療には経済力が要る


不妊治療は、長引くと、多くのお金がかかる場合が多い。

治療の流れとしては、まず不妊に関する検査を行い、妊娠しにくい原因が見つかれば、その治療をする。例えば、月経周期が乱れていたり、妊娠に関係するホルモンの分泌が不十分だったりすれば、投薬治療を行う。
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そのうえで、妊娠しやすくする治療として、タイミング法や人工授精、そして体外受精や顕微授精というように、段階的に治療をステップアップさせていくことになるのが通常だ。

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出典:筆者が作成

一般不妊治療であれば、健康保険の対象となって3割負担で済むことも多い。しかし、高度生殖医療となると自由診療となり、費用も跳ね上がる。とりわけ負担が重くなるのが、体外受精や顕微授精といった「特定不妊治療」だ。

これらは費用も高く、身体や精神的な負担も想像以上に大きい。治療が長引くと、不妊治療に専念するために仕事を辞めたり、それとは反対に、仕事や心身、貯蓄への負担から不妊治療を断念してしまう人もいる。

特定不妊治療の流れとしては、まず1回の採卵で複数の卵子を「採卵」するために、排卵誘発剤を使って多くの卵子を育てる。卵子を成熟させるために連日注射を打ち、同時に薬で排卵を止めるといった調整も必要になる。採卵の際には麻酔が行われるし、受精卵を子宮に戻す「胚移植」を行った後は、黄体ホルモン薬の投与もある。

こうした注射や超音波検査などにより、通院回数も、1周期(約1カ月が一般的)に5回から10回程度と多くなる。もちろん費用も、体外受精(採卵・胚移植)1回あたりで約30万円から50万円ほどかかってしまう。排卵誘発剤などの薬代などは別途かかる位置づけで、ほとんど薬を使わなくてもいいケースもあれば、薬代だけで10万円以上かかる場合もある。

受精卵を凍結するケースも多いが、その際には追加の費用が必要だ。ただ複数の受精卵を凍結保存すること(凍結胚)ができれば、次回は採卵を省略して胚移植だけで済むぶん、治療費や身体の負担を少なくすることもできる。

とはいえ、不妊治療は、1回目の治療で妊娠・出産できるとは限らないため、何度も治療を繰り返すことになる。費用を抑えようと人工授精を選択したものの、10回繰り返したら体外受精と変わらない金額になっていたというケースもある。そのため、公的な助成制度に注目が集まっている。

不妊治療に関する公的助成の現状


不妊治療に関する助成はこれまでもあった。治療開始時の妻の年齢が43歳未満である法律婚の夫婦に対し、特定不妊治療(体外受精・顕微授精)の費用を助成するというものだ。

ただしこれには、夫婦の所得が730万円未満(額面ではなく、課税所得金額で判断)という制限がある。助成金額は、初回が30万円で、2回目以降は1回15万円。助成回数は、初めて助成を受ける妻の年齢が39歳以下なら6回まで、40歳から43歳未満なら3回までだ。

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出典:厚生労働省「不妊に悩む夫婦への支援について」より作成

各自治体によっては、この所得制限を引き下げたり、独自の助成(男性が原因の場合の治療の助成など)を設けたりする取り組みもある。各自治体で異なるため、不妊治療の開始前に情報を確認しておくことが重要だ。
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文・図=竹下さくら

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