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ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信

「地上最強の男」マイク・タイソン(写真中央)が新型コロナのチャリティのため14年ぶりに試合に臨んだ(Joe Scarnici/Getty Images)

引退後、14年ものあいだ試合から遠ざかっていた「地上最強の男」マイク・タイソン(54歳)がリングに帰ってきた。 

11月28日、ロサンゼルスのステープルズ・センターで、2人の元ヘビー級世界チャンピオンが闘った。エキシビションマッチという建前だが、カリフォルニア州の管理・許認可団体であるアスレチック・コミッションの裁定を受けている試合だ。

難航したタイソンの闘う相手


不幸な幼少時代と、12歳までに51回も逮捕された少年院時代を経てプロボクサーとなったマイク・タイソン。2005年に引退したあとも、離婚やアルコール中毒症に苦しむなど、絶えない人気とは裏腹に、私生活では苦闘を続けてきた。

しかし、2011年に国際ボクシング殿堂に殿堂入りをして以降は、俳優業やライブのコメディショーなどに挑戦し、総再生回数約1億回の視聴を稼ぐユーチューバーとして若い世代からも人気を博している。

今回の対戦相手は、ボクシング史上最高の身体能力を持つと言われるロイ・ジョーンズ・ジュニア(51歳)。重量パンチを武器に、2003年には、106年ぶりとなるミドル級出身者によるヘビー級世界王座獲得を果たした選手だ。

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ボクシング史上最高の身体能力を持つと言われる対戦相手、ロイ・ジョーンズ・ジュニア(Richard Schultz/Getty Images)

フットワークが軽快で、攻撃の幅が広い。通算66勝を収め、そのうち47試合がノックアウト勝ちというレジェンドで、なによりたった2年前まで現役だったということで、タイソンの対戦相手としても文句なしと前評判が高かった。

コロナ禍のなか、無観客のリングとはいえ、ペイパービュー(見たい番組に課金する)方式で放映されたこの試合は、視聴料だけで1億円を稼いだとされ、まさに今年の全米のスポーツで最大の話題の1つとなった。

タイソンは引退した翌年の2006年に、このようなエキシビションマッチをやると宣言していたが、最初の試合が不評に終わり、それ以降やることはなかった。

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大によってアメリカが世界一の死者を出し、ほとんどの州でロックダウンの緊急宣言下にあった今年の4月、タイソンはチャリティ・ボクシングをやろうと思っているとユーチューブ上で発表していた。

今年54歳になるタイソンに対して、スパーリングならともかく、本気の試合などできるはずがないという専門家の指摘も多かった。が、それとは裏腹に、全米のスポーツファンの間では、噂が噂を呼び、本当にやったらどうなるかという、まるで映画「ロッキー・ザ・ファイナル」(シリーズ第6作でロッキーがエキシビションで再びリングに戻ってくる)のような盛り上がりを見せていた。

ところが、なかなかいい対戦相手が見つからなかった。オーストラリアのボクシングプロモーターがラグビー選手と対戦させるアイデアを出したこともあったが、タイソンは、ボクシングに対する不敬になる恐れがあると拒絶し、やるのなら本物のボクサーとやると断じていた。

また一時は、タイソンに試合中に耳をかじられた因縁の相手、イベンダー・ホリフィールドもリング復帰に興味を示し、両サイドが契約に向かうかと思われていたが、これもなかなか進行せず、結局7月23日に、今回のジョーンズと契約を交わすこととなった。

当初試合は9月12日に行われる予定だったが、チャリティ・イベントとしての収益を上げるために、場所も屋外サッカースタジアムからロサンゼルスの象徴とも言うべき屋内イベントセンター、ステープルズ・センターにして、試合日も11月28日とした。

文=長野慶太

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