14年ぶりにリングに戻ってきたマイク・タイソンを全米はどう見たか

「地上最強の男」マイク・タイソン(写真中央)が新型コロナのチャリティのため14年ぶりに試合に臨んだ(Joe Scarnici/Getty Images)


メディアではタイソン勝利の声が


当の試合の結果は、引き分けだった。しかし、ニューヨーク・タイムズのベテランスポーツ記者ケビン・ドレイパーが指摘しているように、誰の目から見ても、スタミナをなくし、全身で息をしていたジョーンズと比べ、タイソンは往年のオーラを放ち、スタミナもスピードもパンチ力も現役の頃と比べても見劣りがしなかった。

ジョーンズはクリンチを繰り返すことに専念するしかない防戦だったが、タイソンは放ったパンチの数も有効打数も圧倒的で、「タイソンが間違いなく勝っていた」との評が大方だった。

ドレイパー記者は、「2人の健闘は想像以上だった」と試合のクオリティを誉める一方、引き分けという試合のジャッジは「まるでジョークだ」と苦言も呈していた。

また、ジョーンズは試合後に、タイソンのボディブローに相当なダメージを受けたことを告白している。確かに、最終ラウンドが終わった後も、まだやれると意欲を見せたタイソンに比べて、ジョーンズはそこが限界という感じだった。

CBSスポーツのジャーナリスト、ブライアン・キャンベルも、タイソンの勝利は明らかだったと分析。無観客でも十分であった盛り上がりを讃えながらも、ジャッジだけが本気を出さなかったことが唯一の難点だと手厳しいコメントを残した。

いずれにせよ、この試合には、54歳と51歳が闘い、多くのスポーツファンに勇気と希望を与えたと賞賛の声ばかりが集まった。特筆すべき点は、2分間8ラウンドという16分を、この2人が最後まで本気で闘い抜いたことだった。

このファイトマネーで3億円をジョーンズが稼ぎ、タイソンは10億円を稼いだと言われているが、タイソンはすべてのファイトマネーをチャリティに献じると公式発表している。

試合直後のインタビューでタイソンは、現役選手との公式試合への復帰についても質問を向けられると、笑顔でかわしてコメントを避けたが、このエキシビションマッチを今後ももっとやっていきたいと意欲を示した。

またタイソンが「チャリティの大義のなかで、本気のボクシングをやることのほうが、若い時の自分がやってきたことよりもずっと意味がある」とまで言って、ファンを沸かせていたのが実に印象的だった。

連載:ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信
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文=長野慶太

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