ロールス・ロイスが小型原子炉16基建設。270億円超を助成する英国の「思惑」

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なぜ大型の原子炉ではなくSMRなのか


ロールス・ロイス率いるSMR開発企業連合によると、地方一帯に大規模な原子力発電所を建てるプロジェクトよりも、多数のSMRを建設したほうが好都合だという。本プロジェクトでは、原子力発電を抜本的に見直し、ハイテクなレゴのような機能性を備えることを目指している。

中央の工場で何百ものモジュールを製造して別場所へ搬入する。イギリス全土でこうした重労働を分担すれば、原子力エネルギーにかかる莫大なコストの削減が期待できる。

複雑かつ広大な原子力発電所は、高い安全基準を維持する必要があり、膨大なコストが発生する。また、巨大な原子力発電所の建設は難度が高く、変更を加えたり失敗から学んだりすることは許されない。

工場生産の簡素化が、新規格の簡素化につながる


SMR企業連合によって建設された「UK SMR」のCEOであるトム・サムソン氏は、ガーディアン紙に対し、本プロジェクトが計画どおりに進めば、大型原子炉の建設にかかる費用を大幅に削減できるだろうという声明を発表した。

また、管理された環境下で稼働すれば、規格化、簡素化によるコストダウンがかなうことを付け加えた。

SMRの完成予定は未来 そこからエネルギー需要に応えていく


SMRは1基で44万kWの電力を生み出し、イギリス中部の都市シェフィールド全体の電力需要をまかなうことができる。専門家の予想によると、1基あたりの発電コストは最大26億2000万ドル(約2726億円)だ。

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イギリス中部の都市シェフィールド(Getty Images)

SMRの1号機の建設には10年ほどかかるが、それ以降は1年に2基のペースで建築される見込みだ。

本プロジェクトは、イギリスの温室効果ガス排出量の実質ゼロ化をまるごとサポートするものではないものの、最初の一歩となる。今まで利用してきた交通機関や家庭用暖房システムのニーズはおおむね変わるわけではない。ただし、SMRは増加の一途をたどるイギリスの電力需要にこれから歳月を重ねながら確実に応えていくはずだ。

(この記事は、英国のテクノロジー特化メディア「Wonderfulengineering.com」から転載したものです)

翻訳=神原里枝 編集=石井節子

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