ビジネス

2020.12.03

テレワークの落とし穴 経理担当を青ざめさせる請求書問題

紙の請求書が、経理担当のテレワークを阻害している(Shutterstock)



日本の経理部門は、数字を集計する「事務作業屋」にとどまっていて良いのだろうか(Unsplash)

そして、もし不渡りを出してしまえば、企業の信用力に大きな影響を及ぼし、資金繰りの面でその後の経営はかなり難しくなるだろう。請求書の処理が滞って支払いが遅れるという事例は、以前にもなかったわけではないが、コロナ禍によってそのリスクは倍増しており、現状は「経理危機」のような状況に陥っている場合も多いと黒﨑は指摘する。

「極端なことをいえば、資金繰りに窮する中小企業などの場合は、得意先企業の経理業務に支障がでれば、倒産の懸念さえも出てくるわけです。現場の経理担当者の工夫と労力で、問題が水面下で止まっている場合も多いですが、リスクの大きさを考えれば決して無視できる問題ではありません。

ハンコが在宅勤務を妨げていることがしばしば報道でも取り上げられていますが、紙の請求書の問題も、それと比べ物にならないほどのリスクです。経営にかかわる人たちは、コロナ禍におけるこの経理危機についてもっと認識する必要があると考えています」

コロナ禍をきっかけに会社の体質改善も


また堀地によれば、 経理部門の紙の請求書問題を解決し、リモートワークが進むことによって得られるメリットは、経理部門に対するものだけに止まらないと言う。

「経理の仕事は30年くらい改革が起きておらず、いまだに多くの経理部門は数字を集計する事務作業屋さんに終始してしまっています。しかし、会社の財務状況を最も把握しているのは経理部門の人たちなので、彼らが価格交渉に出て行ったり、コストカットについて判断したりすることで、会社にポジティヴな影響を与える可能性を秘めています。

日本の経理部門と違って、海外の企業で「Finance & Accounting」と呼ばれる部門は、組織のなかでも大きな力を持っており、会社の重要な意思決定にかなり関わっています。日本の企業も、経理部門の非効率をなくして、経営戦略のような仕事にも注力できるよう社内改革していくことが、企業体質を強くすることにつながると思います」 

たかが請求書、されど請求書。コロナ禍での紙の請求書問題をきっかけに、経理部門の改革から、会社が生き残るための体質改善へと進む企業も現れるのではないだろうか。

文=渡邊雄介

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