中国の「マイナス利回り国債」が、中国と市場に重要である理由

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中国にとって素晴らしいこの状況において、中国が保有する外貨準備を分散する最善策のひとつは、ユーロ建て国債を発行して、それと同時に対価をもらうことだ! 中国は多額のユーロを手にする。あとはそれを、利子なしで金庫にただ保管しておいてもいいし、高い金利をつけて貸し付けるという手もある。

国がマイナス利回りで国債を発行することと、民間企業がマイナス利回りで社債を発行することの違いに注意しよう。民間企業がユーロ建てて社債を発行し、ユーロで資金を調達した場合には、通貨リスクが伴う。ユーロが変動すれば、ユーロを償還すべきときに、払うべき実質価値が大幅に上昇する事態になりかねない。したがって民間企業は、為替市場を利用してヘッジしなくてはならないが、そうすれば、低利回り(マイナス利回り)が持つ多くのメリットは実質的に打ち消されてしまう。

一方で、国の場合にはこうした制約がない。中国政府には外貨準備の分散という長期目標があるため、ユーロを持つことや為替変動は実のところ好都合であり、分散化という目標と整合する。もし、償還期限までにユーロ安となれば、償還に必要な人民元は少なくなる。逆にユーロ高となれば、中国政府は単に、人民元を発行して必要なユーロに交換すればいい。これが、国家にとってのMMTの「魔法」だ。

市場参加者の立場から見れば、世界規模の見事な鞘取りと言うしかない。もし、通貨を発行できるほかのすべての国家が、このように短期間で「価値」を「タダ」で手に入れられることに気づけば、低利回りかマイナス利回りのユーロ建て国債がいっそう増加していくことだろう。

それはひとえに、他国の中央銀行、とりわけ欧州中央銀行が、現実から目を背けていることによる予期せぬ結果だ。彼らが、マイナス金利を導入して、ヨーロッパでマイナス利回り国債を買い入れ、市場を現金で溢れさせることを助けているからだ。世界がパンデミックに見舞われているなかで、株式市場が重力に逆らっているように見えるのは不思議なことではないだろうか。

翻訳=ガリレオ

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