「Odeuropa」と呼ばれる団体は、歴史学や美術史、計算言語学、コンピュータビジョン、博物館学などの専門的知識を持つヨーロッパの科学者らのグループだ。彼らは、今後の3年間で歴史的な匂いや香りのデータベースを構築すると宣言した。
研究チームは、様々な香りがどのように社会的な意味を獲得し、時間の経過とともに変化してきたかをチャート化しようとしている。Odeuropaの一員のウィリアム・タルレット博士は、ガーディアンの取材に、「タバコの香り」を例にあげて説明した。
「16世紀に欧州に持ち込まれたタバコは、最初は非常にエキゾチックなものと捉えられていたが、すぐに一般レベルに普及し、日常の暮らしの一部となった」
研究チームは、AI(人工知能)のアルゴリズムで、歴史的な書物や画像から香りについての言及を探し出し、データベースに集約していく。その過程で、匂いがもたらした感覚や、社会的意味などを探り出し、それらが時間と共にどう変化したかを把握するという。
「ローズマリーなどのハーブはかつて、ペストのような疫病から身を守るために使われていたし、18世紀から19世紀にかけては気つけ薬としても使用されていた」と、タルレット博士は話す。
研究チームは、香りの百科事典とも言えるデータベースを構築することで、歴史を様々な感覚を通じて味わうエクスペリエンスを生み出そうとしている。彼らはさらに、AIの力で過去の香りを復元し、それらを博物館などに提供しようとしている。
AIで歴史を再現するプロジェクトは、他にも存在する。昨年、ロンドン大学の研究者たちは、マシンラーニングを用いて15世紀の北ヨーロッパの画家である、ファン・エイク (van Eyck) の絵画の一部を再現した。
EUが資金援助を行ったもう一つのプロジェクトのTime Machineは、AIを用いて欧州の都市が過去にどのように見えていたかを再現していた。
さらに、グーグルは今年10月、歴史的な地図や画像を使って都市を再構築するための、ディープラーニングを基盤としたツールセットを発表した。グーグルはこのツールで、人々が仮想空間の中で歴史的な都市を訪問できるようにしたいと述べていた。
考古学者らの間では、AIを遺跡の発見に利用する試みも始まっている。膨大な量のデータを精査し、将来を予測可能にするAIは、人々が歴史を探る上でも非常に役立つツールだ。
言い換えるならば、AIは人類の未来であると同時に、過去を知るためのツールなのだ。