産後のうつ症状 実は数年続く可能性示す調査も

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新たに子どもを持つ女性の70~80%が出産後、気分の落ち込みを経験すると推測されている。これは、産後の軽い鬱(うつ)症状である「ベビーブルー」から重度の産後鬱まで、程度はさまざまだ。

子どもが生まれることは、身体にとって非常に衝撃的な出来事であるだけではなく、毎晩の睡眠不足やホルモンの変化、生まれたばかりの子どもを満足させ健康を維持することなどに慣れなければならないことから、心の健康が損なわれかねない。

医師は、新たに子どもを持った人の心の健康状態を、出産から最大半年間かけて定期的に確認することが推奨されている。しかし新たな研究によれば、産後鬱は出産後も3年続く可能性がある。研究者らは、新たに子どもを持った親たちの心の健康に対してより大規模な支援が必要とされているかもしれないと示唆した。

米国立衛生研究所(NIH)が実施した研究は、新たに子どもを持った約5000人の母親を3年間にわたり調査した。NIHは、4人に1人が3年間のある時点で高い鬱症状を経験していることを発見した。またその他は、この間もより軽度の鬱症状を経験していた。

医師には現在、出産後2、4、6カ月後の時点における親の心の健康状態を確認することが推奨されている。あなたの医師もこうした検診で、自身の気分や圧倒された気持ちになるか、自傷や子どもを傷つけたいと考えるかに関して確認するかもしれない。他に一般的な症状としては、子どもとのつながりを感じられないこと、過少あるいは過多な食事量・睡眠量、集中力や記憶力の問題などがある。

心の健康に関する議論はここ10年間で非常に盛んに行われるようになった。しかし、産後鬱に関する沈黙やスティグマ(負の烙印)はいまだに存在する。非常に多くの人が産後に悲しみを感じ、圧倒された気持ちになるにもかかわらず、この時期は喜びを感じる時期だとされているため、人々は声を上げることを恥ずかしいと思ってしまいかねない。産後鬱に結び付けられたスティグマが減れば、産後鬱の診断は今よりはるかに増えると考えられている。

研究の主執筆者で、米国立小児保健・人間発達研究所(NICHD)伝染病学部門のスタッフサイエンティストとして働くダイアン・パトニックは、研究結果について「私たちの調査からは、鬱症状を測る上で6カ月は十分ではない可能性が示されている。こうした長期的なデータは、子どもの健康や発育にとって非常に重要であると理解されている母親の心の健康をより深く理解する上で鍵となるものだ」と述べた。
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翻訳・編集=出田静

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