こうした状況を考えると、カーニバルは生き延びることができるのかという疑問がわく。同社の舵取りを行う最高経営責任者(CEO)のアーノルド・ドナルドは、パンデミックがもたらした難題に立ち向かいながらも、何とか倒産を免れようと奮闘している。
ビジネスニュースサイト「カルチャーバンクス(CultureBanx)」によると、同社には財務上の逆風が強く吹いており、それを回避するのは容易ではない。CLIAの推定では、クルーズ船の運航停止によって250億ドルを超える経済活動が消滅し、米国では16万4000人の雇用が失われた。2020年のクルーズ船業界は、損失額が何十億ドルにも上り、株式の価値は70%以上が吹き飛んだとAP通信は報じている。
カーニバルはジャンク債を発行して57億5000万ドルを調達しており、当面は生き延びることができるだろうが、見通しが順調というわけではない。ドナルドはCNBCに対し、同社には、たとえ年内いっぱい売上が得られないとしても生き残れるだけの資金があると自信を見せている。
カーニバルの売上は、2019年第3四半期は65億3000万ドルだったが、2020年同期には3100万ドルまで落ち込んだ。資金の流出は、2020年第3四半期には月額7億7000万ドルに上ったが、第4四半期には5億3000万ドルに減る見込みだ。
資金流出がこのまま続くか増えるかすれば、倒産の危機に瀕するおそれがある。いまのところ、バランスシート(貸借対照表)上ではおよそ76億ドルのキャッシュがある。
米疾病予防管理センター(CDC)は2020年10月30日、クルーズ船運航をめぐる新たなルールを発表した。これにより、米海域では大型クルーズ船の運航再開が、すぐにではないにせよ可能になる。CDCは要件として、旅程の最初と最後に、全乗客乗員に対し新型コロナウイルス感染症の検査を実施するよう求めている。旅程は最大で7日間という制限付きだ。