新型コロナ対策、「検温」に頼ってはいけない理由

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「その実施には、少なくとも大変な労力と大金を要した。だが、あまり効果的ではなかったようだ」──新型コロナウイルスの感染防止対策として米疾病対策センター(CDC)が国内の空港で行った利用客のスクリーニングについて、CDCは自ら実施した調査の結果、そう結論付けたようだ。

CDCは空港での新型コロナ対策として、米国土安全保障省(DHS)とともに今年1月17日から利用客を対象としたスクリーニングを実施。9月13日までに旅行者76万6044人を調べた。

だが、このうちスクリーニングによって、検査が必要と判断された人は35人。検査の結果、陽性であることが確認された人はわずか9人だった(このほか航空会社による検査など別の方法で、14人の陽性が確認された)。

このスクリーニング・プログラムは、次の3つのステップを通じて、旅行者が感染していないかどうかを確認するものだ。

1. 到着前の14日間に感染リスクの高い地域を訪れたかどうかを税関・国境警備局の職員が確認。訪問していれば、ステップ2に進む。

ハイリスクの地域として指定されていたのは、1月17の時点では中国・湖北省の武漢のみだったが、その後は段階的に、以下に拡大された(かっこ内は指定された日付)。

中国本土全域(2月3日)、イラン(3月2日)、欧州シェンゲン圏26カ国(同14日)、英国とアイルランド(同17日)、ブラジル(5月28日)

2. 非接触体温計で検温を行い、体温が38°Cを超えていないかチェックするなど、感染の兆候を確認。過去24時間に何か症状があったか、過去14日間に感染者に接触した可能性があるかどうかなどを尋ねるアンケートに回答してもらう。必要と判断された旅行者は、ステップ3へ進む。

3. 空港内の検査室、または地域の医療施設で、医師や専門家による詳しい検査を受ける。

これらを行うためにかかる費用は、安くはない。空港にCDCの職員を派遣する費用も、スクリーニングに関連する委託費も、CDCが支払う必要がある。また、陽性が確認された旅行者を隔離するために必要な施設や設備などにも、費用がかかる。
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編集=木内涼子

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