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2020.11.28

東京駅「虫グルメフェス」に行ってみた 記者の「昆虫食」満腹レポート

コオロギが1〜2割入っている3種のハンバーグ


初心者におすすめのハンバーグ3種


次に、昆虫だけでなくジビエも食べようと、都内に3店舗を持つ「鳥獣虫居酒屋 米とサーカス」ではコオロギ・鹿・牛豚を材料にした、3種のハンバーグ食べ比べセット(1400円・1日20食)をお願いする。これらのハンバーグにはどれもコオロギが1〜2割入っていて、噛みしめると軽いスナック食感もあるという新しい体験ができる。

一つ目はコオロギ20%にひよこ豆、米、野菜と、肉が使われていないハンバーグ。スパイス風味があり、肉のハンバーグに負けない食べ応えがあった。二つ目のコオロギ10%と天然の鹿肉のハンバーグは、脂質が少ないということであっさり風味。最後の牛豚合い挽きのハンバーグはコオロギが10%入っている以外は普段のハンバーグとまったく変わらない。

これらは渋谷PARCO店でハンバーガーとして提供されていて、虫が入っているように見えないので昆虫食初心者にも食べやすく、入門メニューになっているという。

スイーツにも昆虫食の波


そろそろお腹もいっぱいで、締めのデザートが欲しくなってきた。高崎経済大学発ベンチャーの「FUTURENAUT」と、東京農業大学学生ベンチャー「うつせみテクノ」、昆虫食活動家・昆Tuber「かずき」がコラボしたコーヒーがけアイスクリーム「アフォガート」(700円・1日30食)をいただく。


コオロギコーヒーとコオロギパウダーをかけたアフォガート

コオロギコーヒーがたっぷり注がれたアイスクリームに、コオロギパウダーをかける。これも虫の姿が見えず、慣れない人にも抵抗なく食べられるだろう。このブースでは店員も大学生が務める。「『虫感』が足りなかったら、コオロギパウダーを追加でかけますので」と勧めてくれた。

もうこれ以上お腹に入らない。最後まで驚きの連続で、味見は幕となった。

2014年創業で日本の昆虫食ベンチャーの中でも一番の老舗というTAKEOのタガメサイダーも飲みたかったが、サンプルとして展示されていたタガメのにおいだけ嗅がせてもらった。


タガメサイダーのディスプレイ

このイベントの特別アドバイザーを務める昆虫料理研究家の内山昭一さんは基調講演で「タガメサイダーはラ・フランス(洋梨)のフルーティーなにおい。これは実はオスのフェロモン」と話していた。半信半疑だったが、実際に嗅がせてもらうと実際、洋梨そのものとしか思えない。こちらは昆虫食TAKEOブースで200ml入り瓶を480円で販売するほか、会場のドリンクブースで700円で提供される。

「最初にナマコを食べようと思った人間は何を考えていたのだろうか」などとはよく言うが、内山さんの話によると、野生のチンパンジーはシロアリをアリ塚からとって食べるし、猿人・原人といった祖先も昆虫を食べたそうだ。日本においても大正8年に55種類の昆虫が食べ物として記録され、高度成長期にその伝統が途絶えたという。

欧米の人にタコや納豆を食べる習慣がなく、食卓に出すと驚かれることから連想できるように、ただ食べる習慣がないからということなのだろう。

毒がなく、栄養が含まれていれば、元来どんな生物でも食べ物になりうるのだ。別にサバイバル状況に追い込まれたわけでもないが、生き物としての原点を再確認させられた気持ちだ。
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文・写真=縄田陽介

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