長距離便の機内でコロナ感染 可能性示す新たな研究結果

Andriy Onufriyenko / by Getty Images

新型コロナウイルス感染症が長距離フライトで拡散する可能性があることを示す新たな事例研究結果が、ニュージーランド保健省により発表された。

9月には、他にも2つの国際研究が同じ結論に達している。また先月にはアイルランドで、感染者59人が同じ7時間の国際便に関連していることを示した研究結果が発表された。

ニュージーランドの研究チームは、9月末のアラブ首長国連邦(UAE)ドバイ発オークランド行きエミレーツ航空便(飛行時間は18時間)に搭乗した乗客の間で発生した集団感染事例について分析した。この便の乗客86人のうち7人が、入国後14日間の隔離期間中に受けた検査で陽性になった。

機内ではマスクの着用が義務づけられていなかった。乗客の自己申告によると、感染者のうち5人は機内でマスクと手袋を着用していたが、2人は着用していなかった。

また感染者7人のうち5人は搭乗前の48時間以内に受けた検査で陰性になっていた。DNA分析により、この集団感染はフライト前にPCR検査で陰性だった一人の乗客が発端だったことが示唆された。この乗客は感染力を持っていたものの、搭乗中は症状がなく、少なくとも4人の乗客に感染を広げていた。

多くの国では、公衆衛生当局が入国後の乗客の監視が不可能となっているが、ニュージーランドでは入国者の隔離が当局の管理下で行われるため、今回研究対象となった乗客は全員が監視下に置かれ、14日間の隔離期間中に再度検査を受けていた。

感染者が搭乗前の検査で陰性になり、その数日後の隔離期間中に陽性になったことは、「出発前検査の価値を見極める上での問題を示している」と研究チームは指摘。「今回の研究結果からは、フライト前に検査が行われ、ソーシャルディスタンシング(対人距離の確保)が守られ、機内で個人用保護具(PPE)が使われたとしても、ニュージーランドに到着する国際便の乗客は全員が新型コロナウイルスに感染している可能性があると考える重要性が浮き彫りとなった」と。

ただ航空業界は他の研究結果として、機内での新型ウイルス拡散リスクは非常に小さいことが示されていると指摘。国際航空運送協会(IATA)は先月上旬、「機内で感染するリスクは、雷に打たれるのと同じ確率」だとする研究結果を発表した。また同じく先月には、米国防総省とユナイテッド航空が発表した研究結果から、機内では空気のろ過と循環が集中的に行われるため、マスクを着用している乗客が機内で新型コロナウイルスに感染するリスクはたとえ満席のフライトであっても極めて低いことが示された。

ハーバード大学T・H・チャン公衆衛生大学院の分析では、空気のろ過や全員のマスク着用、人が触れる頻度が高い部分の消毒、対人距離の確保、フライト前の乗客の体調確認といった「非医薬的介入を複数の段階で行うアプローチ」を導入している場合、機内での感染リスクは非常に低いと結論づけている。

一方で、米疾病対策センター(CDC)はより総合的な見方をし、相反する研究結果があることを認めている。CDCの渡航指針では「機内では空気が循環し、ろ過されているため、ウイルスやその他の細菌の大半は簡単には広まらない。しかし混み合った機内では対人距離を取るのが難しく、時に数時間にわたり他者の6フィート(約1.8メートル)以内に座ることになり、新型コロナウイルス感染のリスクが高まる可能性がある」とされている。

編集=遠藤宗生

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