コロナ禍で増加する不安障害に「ジェンダーギャップ」も

Rafa Elias / by Getty Images

心の健康やストレスをめぐる会話は、ここ数年でかなりオープンになってきた。パンデミックの発生以来、「セルフラブ(自分を大切にすること)」や「ウェルネス(全体的な健康)」といった言葉が流行している。

今年は多くの人にとって、信じられないほど困難な年であり、不安や気分の落ち込みを訴える人の数も増えている。しかし複数の研究結果では、そうした症状の診断にジェンダー間の違いがあることが示唆されている。「不安のジェンダーギャップ」とは、どのようなものなのだろうか? 複数の研究によると、女性は、不安障害と診断される率が男性の2倍にのぼり、そうした障害の薬を処方されるケースも多いことが示唆されている。

人生のどこかの時点でメンタルヘルスになんらかの問題が生じたと診断される人は、全体の50%を超えると推定されており、また、5人に1人はメンタルヘルスの問題を毎年経験している。とくに診断が出ることの多い不安障害は、全般性不安障害(GAD)、強迫性障害(OCD)、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、社会不安障害、パニック障害だ。ある研究によれば、女性が不安障害と診断される率は、男性の2倍にのぼるという。さらに最近の研究では、メンタルヘルス問題の診断や管理方法を決めるうえで、ジェンダーが重要な因子になっている可能性が明らかになっている。

スペインのバスク大学が実施した研究では、不安障害と診断されたり、そのための薬を処方されたりする率は女性のほうが高いことが明らかになった。これはつまり、女性のメンタルヘルスが過剰に医療化(over-medicalization、従来は医療的問題とされていなかったものが医療の対象とされること)されているということなのか、それとも、男性における診断が不足しているのか。この点を特定するためには、さらなる研究が必要だと研究チームは述べている。

著者のひとりであるアマイア・バシガルペ(Amaia Bacigalupe)は、この研究について次のように話している。「女性は、たとえ心の健康状態、診断、医療センターへの訪問頻度という点で男性と違いが見られない場合であっても、鬱や不安障害と診断されることが多い。また、向精神薬を処方されるケースも大幅に多い。これらのことは、女性の精神衛生に関して医療化プロセスが存在することを示している可能性がある」
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翻訳=梅田智世/ガリレオ

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