ジェンダー観を問い直す雑誌『IWAKAN』が「分かりづらい、でも共感される」理由

既存のジェンダー観に違和感を抱える人に寄り添う雑誌『IWAKAN』=REING提供


アボ自身は長い間、「若い女性は恋愛をするもの」という社会の「常識」に疑問を持ち続け、生きづらさを感じてきた。恋愛の心配ばかりされ、女性がキャリアについて語りづらい風潮を前に自分の方がおかしいのではないか、と思ったこともあったという。

「社会に押し付けられた『男らしさ』や『女らしさ』に違和感を持つ人がいるのは、セクシュアルマイノリティだけでなく、シスジェンダーも同じ。その違和感に優劣はなく、私たちはどちらも同じように扱うべきだと考えています」

悩みをジャッジすることはない すべての人たちに向けて


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REING代表の大谷明日香(手前)

REING代表の大谷は、こう付け加えた。

「ジェンダーに違和感を持った経緯も、違和感の大きさも人それぞれ。『IWAKAN』に関心を持ってくれた人にどんなバックグラウンドがあろうと、私たちがその悩みについてジャッジすることはありません」

すでに届いている読者の反響を教えてもらった。「たった50ページなのに、意外と読むのに時間がかかった」という声があったそうだ。アボによると「いい意味でわかりにくかった」という感想が多かったという。

「それはおそらく、『IWAKAN』の制作に携わった人全員が、『女男』というテーマに対して、それぞれ全く異なる視点で異なるアプローチを取っているから。さらっと一読して閉じてしまうのではなく、人それぞれの違和感を自分なりに咀嚼しながら読んでもらえたら嬉しいです」

今後について、アボは「いろんな領域の男女の違和感をしっかり取り上げることで、ジェンダーに違和感を持つ人たちが新しい視点を得たり、自分を肯定できるような雑誌にしていきたい」と意気込む。

次号の発売時期は来春を予定。創刊号はREINGの公式Webサイトでも販売中(1500円+税)だ。

REINGが運営するコミュニティ「REING Living」では、ジェンダーや多様な個のあり方を考えるイベントを定期開催しており、多様な人たちが集まる場になっている。「REING NIGHT」では、時事トピックや広告表現から日本のジェンダーについてのイシューを語り合う。このほか、映画を通じてジェンダーの観点から視点を交わす対話イベント「Purple Screen」など、気軽に参加できる会もある。

大谷は「純粋な気持ちで学びたいという方が、誰とでも連携できるような場にしたい」と語る。それはまさに性別もジェンダーも関係なく、すべての関係性をポジティブに受け入れるような柔らかな空間だ。

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文=一本麻衣 写真=平山尚人

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