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2020.11.28

中国で急成長のオンライン証券「富途」創業者はテンセント出身

Getty Images

コロナ禍の中国では、オンライン証券の「富途證券(Futu Holdings)」が運営するアプリで株取引を行う個人投資家が急増している。同社の株価は今年に入って急騰し、創業者であるLeaf Liの資産額は460%近く増加した。

深圳市に本拠を置く富途證券は、「Futubull」と「Moomoo」という2つの株取引アプリを運営している。同社は米国のナスダック市場に上場しており、株価は3月の8ドル付近から、現在は46ドル以上に上昇している。現在44歳のLiは、同社の株式の40%を保有しており、資産額は23億ドルと推定される。

富途證券は11月19日、今年第3四半期の登録ユーザー数が前年同期比で80%増加し、約120万人に達したことを明らかにした。第2四半期の伸びは55%だった。

「パンデミックは、オンライン証券の利用者数増加に寄与しており、リアルな証券会社との差別化に役立っている」とLiは述べている。

富途證券の第3四半期の売上高は前年比272%増の9億4620万香港ドル(約128億円)、純利益は前年の18倍となる4億170万香港ドル(約54億円)だった。

富途證券のユーザーは、中国本土の企業が発行するA株(人民元普通株)ではなく、香港市場で取引される銘柄に投資することができる。上海本拠の調査会社KapronAsiaでアナリストを務めるWang Leileiは、このことが富途證券にとって競合退社との差別化になっていると指摘する。

「A株を対象とする証券会社間の競争は激しく、ライセンスの取得も困難だ。富途證券は、設立当初から香港株の取引きを対象としている」とWangは話す。

中国国内での競争は激しいが、Liは海外市場の銘柄を取引きできるライセンスを取得することで優位性を発揮できると考えている。富途證券は、8月にシンガポールでのライセンスを取得し、来年中頃までには同国で株取引サービスを開始する予定だ。米国でもライセンスを取得しており、現在は本格リリースに向けたテストを行っている。

Liは、将来的に売上の3分の1を海外市場で稼ぎたいと考えている。

創業者はテンセント出身


アント・フィナンシャルによる350億ドル規模のIPOが延期になって香港市場に対する投資熱は少し冷めたが、上場規則の緩和を受けて、中国テック企業の多くが今後も香港市場への上場を目指すとLiは見ている。また、米大統領選でバイデンが勝利したことや、新型コロナウイルスワクチンへの期待感から、米国株は大幅に上昇している。

「米国株は、今年初めに大きく値下がりしたが、今後は上昇期待が大きい。また、今後3〜5年間は中国本土の新興企業が香港市場への上場を目指すだろう」とLiは話す。

Liは、これまでの経験からビジネスチャンスを逃さない方法を学んだ。彼は湖南大学でコンピュータサイエンスを専攻し、2000年に卒業するとテンセントに入社した。当時のテンセントは創業2年目の小さなスタートアップで、Liは18番目の社員だった。
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編集=上田裕資

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