──「コアなビジネスアイデア」の良否の見極め方をお教えください。
徹底的なヒアリングから生まれた「コアなビジネスアイデア」を、今度は様々な観点から判別する。この判別基準を私は5つ定めています。
1つめが「市場性」。市場規模と成長性、流動性の3つを見ています。業界用語でいうとTAM(Total Addressable Market)/SAM(Serviceable Available Market)/SOM(Serviceable Obtainable Market)ですね。
これを見ることで、マーケットサイズ、シェアを取りきった時にどれだけ事業として大きくなるか、シェアを取りきるまでにどれくらい時間がかかるかが判別できます。
2つめが先ほどご説明した「ユーザーペインとソリューション」。
3つめが「ビジネススキーム」。自社ですべてやるのか、それとも他社と連携しながらやるのか、という部分。
4つめが「収益構造」。どうやって稼ぐかのマネタイズ手法です。
最後の5つめが「マーケティング」。どうやって拡大するか。
この5つの判別基準、「市場性」「ユーザーペインとソリューション」「ビジネススキーム」「収益構造」「マーケティング」のすべてで勝ち筋が見えているかを、レーザー照射のように様々な角度から徹底的に精査していき、真のエッセンスに絞りあげています。
車を持たずに、車を売る
──非常にロジカル、かつ洗練された精査方法ですね。
この精査工程は、フルコミットしても2カ月くらいはかかります。ですので、起業準備は半年から1年スパンで時間がかかるのが当然と思います。
「おトクにマイカー 定額カルモくん」では、3つめの判別基準である「ビジネススキーム」の成立が鍵でした。リースの金融商品を自社で持ってしまうと、利益が出るのが最低でも8〜9年後になる。これは資本効率の観点から、とてもベンチャーには耐えられません。
車というアセットを持たずに、集客レイヤーに特化しビジネスを回すこと。Airbnbがホテルを持たずに宿泊業を、Uberが車を持たずにタクシー業をやっているのと同じように、「車を仕入れずに車を売る」という方程式を成立させることが肝だったのです。
ですので、立ち上げ当初からアライアンスに投資していくことを決め、今も4人ほどのアライアンスチームでアライアンスし得る会社とのコミュニケーションを取り続けています。
弊社最大のパートナーであるオリックス自動車は、yentaを通して知り合った方の紹介で繋がり、事業立ち上げ前の2017年には何度も何度も先方オフィスに通い、アライアンスの話をまとめさせていただきました。
机上で考えるばかりではなく、実際に行動し、泥臭くいろんな人に話を聞いていく。その活動が1〜2年の時差を経て、必ず結実していきます。一見遠回りに見えるかもしれませんが、徹底的な事前準備が事業の成否を決めることは間違いないと思います。