「もっと成功事例をたくさんつくって、九州のスタートアップシーンを盛り上げていきたい」と山形は熱く語る。九州に赴任してはや14年。「気がつけば、東京一極集中にあらがうことが、自分のライフワークになっていました」。
出身は北海道で、ジャフコ入社後は大阪支店からスタート。その後はフィリピンやシンガポールの海外赴任を経験した。キャリアのなかで東京での投資経験は3年のみ。九州支社の配属前はデューデリジェンスを行う部署に配属し、年がら年中、全国を出張してまわった。そこで感じたのは地方の可能性だ。「優れたスタートアップが東京に集中していることは確かです。ただ、それで本当にいいのかと。実際に地方に行くと、いい経営者はたくさんいるし、面白い会社もたくさんある。そして、地方は住みやすい。この環境に才能をもったタレントが集まれば、何かすごいことが起きるという確信がある」。
一方で、課題も人材にあると痛感している。12年の「スタートアップ都市ふくおか宣言」以来、福岡には起業ムーブメントが起こり、スタートアップは急増。現地のベンチャー投資ファンドも増えて調達環境も申し分ないが、「優秀なエンジニアは集められても、地方には上場準備の経験者やCxOクラスの人材がまだ相当少ない。ピカピカの経歴をもった人材で経営チームを組んで成長できる東京とは違うんです」。山形は、住みやすさだけでなく、東京並みの給料や仕事のやりがいでこうした人材を呼び込む必要性を長年訴え続けてきた。
現在、九州支社の投資スタッフは山形ただひとり。以前は数人いた社員も、紆余曲折を経て本社に吸収されていったという。だが、「マネジメントを気にせずに、単純なプレイヤーとして頑張ればいいんです」と前向きな姿勢を崩さない。担当エリアは九州・沖縄および山口。広大な範囲で手がかかるが、その分だけポテンシャルも大きい。
「今後もこの地域にこだわっていきますよ。地方を出発地として、グローバルに飛躍してやるぞ、という野心をもった起業家と伴走していきたいですね」
東京一極集中に対する山形の挑戦は、これからも続く。
11月25日発売のForbes JAPAN1月号では「日本で最も影響力のあるベンチャー投資家ランキング」のほか、「日本の起業家ランキング2021」やいま注目すべき200社を網羅した2021年版「日本のスタートアップ大図鑑」を掲載している。