企業も個人も。自ら客観視すると「ビジョン」のカケラが見えてくる

原田 朋(左)と尾林誉史(右)


──ビジョンを求める企業が増えているのはなぜでしょう? 特にこの2〜3年で耳にすることが増えていて、それがコロナ禍で加速した気がします。

原田:デジタル化とグローバル化がすごい勢いで進んで、特に20世紀に始まった企業が、存続の危機を感じているからでしょうか。

日本で言うと、2014-15年ごろにIoTという言葉が出てきて、16-17年ごろにAI、そして今度はDXと、どんどん対応しなければならないことが増えてきている。それらの言葉が普及しているのは、向き合っている企業が増えているからだけど、多くの企業や経営者が、その荒波の中でどうしたらいいかがわからなくなっている。

そうしてあたふたしていたところに、今年コロナがやってきて、たとえばお菓子屋さんが、「店頭で売らずオンライン販売しなくちゃ」となるように、これまで頭の片隅にあった変化を可視化し、加速化させました。



──つまりは、変化が激しい中で軸がなくなりそうになっているということでしょうか。

原田:そうですね。そんな状況下で、変化ばかりに目がいって、オリジンが置き去りにされてしまえば「うちの会社ってそんなだっけ?」となってしまいます。かと言って、変化しなければ生き残れず、やりたかったこともできなくなるかもしれない。

さっきのお菓子屋さんの例えで言えば、「美味しいお菓子を届けたい」という創業の想いがあって、デジタルを活用して時代にあった売り方にシフトしなければならないのだけど(デジタルトランスフォーメーション、DX)、DX自体が目的のように掲げられるから「なんか全然違うことやらなきゃいけないみたい」とあたふたしてたりする。

ただ、200年続くお菓子屋さんのような老舗は、いろんな時代を乗り超えてきているので変化に強いですね。創業時の想いやビジョンが弱く、サービスやプロダクト重視、または勢いで立ち上げて、大きくなってしまったような会社が難しいのかもしれないです。

──その老舗のお菓子屋さんは、きっと大きくなろうとしていないですよね?

原田:1日100個までしか作らないお菓子屋さんもありますね。「なんぼ売れてもうちは作りません」っていうスタンス。でも、上場したり、資本主義の大きな流れに乗っちゃうと、毎年成長しなくちゃいけない。止まれない。

そうしてどんどん高速回転して、量や規模を拡大する方向できているけど、みんながそれに限界を感じてき始めている。作りすぎないとか、動物や環境を犠牲にしないとか、「オルタナティブなやり方」が模索されています。
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編集=鈴木奈央 写真=山田大輔

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