企業も個人も。自ら客観視すると「ビジョン」のカケラが見えてくる

原田 朋(左)と尾林誉史(右)


──そんな現代社会で、アメリカではカウンセリングやメンタルクリニックが予防的に利用されていますが、日本ではまだ“病を抱えた人”が行く場所という印象が強いのかなと思います。実際はどうでしょうか?

尾林:そうですね。日本も利用しやすいように変わっていくべきだと思います。弱みを見せるのがかっこ悪いから弱みを見せない世の中になっているのですが、「弱まらないために通ってるんです」と言えるようになるといいですよね。サプリを飲む感覚に近いかもしれません。健康のためのメンテナンスになるのが理想だと思います。

僕はカウンセリングや心療内科、メンタルクリニックはもっと機能していいと思います。「病を見て人を見ないドクター」が多いというのはよく言われるのですが、病を治すには、その人の本質に迫らなきゃ難しい。凝り固まった考え方とか、物の捉え方の癖とか、そういうところまで踏み込まないで薬だけ出しても、いずれ再燃してしまう。

クリニックの「ビジョンパートナー」という名前の裏には、メンタルケアや病院っぽさがあまりなくて、もっと身近に感じてもらえたらという思いもあります。



──尾林さんの言う「病を見て人を見ない」という表現は、企業にもいえることでしょうか? 企業の行き詰まりや課題を見ている人は、実は企業そのものを客観的には見られていないのでしょうか。

原田:会社の中にいる人はそうかもしれない。外から見ている我々だからこそ、「これってひょっとしてこうじゃないですか?」と言えることは多いと思います。もちろん、提案したところでできること、できないことがあるけれど。

僕らが喜ばれる時って、「はっきり言葉にしてくれてありがとう」とか、「ビジュアルにしてくれてイメージがつきました」とか、ぼんやりとはあるけれどうまく表現できないモノゴトを形にしたとき。ビジョンがないところに一からつくるのではなく、あるものを具現化する仕事なのかなと思います。

尾林:かたや僕がやっていることは、企業みたいに多くの消費者や従業員を動かすものではなく、その個人の腹にさえ落ちてればいいんですよね。だから具体的な形や言葉は特に構わず、漠然としたもので良かったりもします。「どうもこっちの方向というのを知っておくといいらしい」ぐらいの感じです。

原田:確かに。僕らがクライアントのビジョンを考えるとき、なんでシンボルを作らなきゃいけないかっていうと、それに関わる人の数が多いからだね。一つの言葉、一つのビジュアルにしないと、その企業で働く人々が方向をはっきり認識できないし、消費者やビジネスパートナーにとって「なにをしているかわからない企業」となりかねない。

だからビジョンを固めるだけじゃなく、その表現までやらなきゃいけないんだなって、今改めて思いました。
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編集=鈴木奈央 写真=山田大輔

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