キャリア・教育

2020.11.28 18:00

企業も個人も。自ら客観視すると「ビジョン」のカケラが見えてくる

原田 朋(左)と尾林誉史(右)

原田 朋(左)と尾林誉史(右)

「ビジョンパートナー」という名のクリニックの精神科医/産業医として、個人のメンタルケアをサポートする尾林誉史と、博報堂ならびに同グループのスタートアップスタジオquantumでクリエイティブディレクター/ビジョナーとして、クライアントのビジョンづくりに携わる原田 朋。

“ビジョン”というと未来のことばかり考えがちだが、それは過去・現在から続くものであり、ビジョンを考えるうえでは“ヒアリング”が重要だと言う二人。しかし、それは裏を返せば、外から積極的にヒアリングされなければ、内を曝け出すことができないという課題なのかもしれない。

では、二人はそれぞれどのようにクライアントの声を引き出し、その前進を支援しているのだろうか。

(対談前編はこちら


──対談の前半で、発信スキルよりも受信スキルの需要が高まっているという話がありましたが、十分に聞いてもらえていない状態になるのは、人が「聞いてもらう」ことが不得意だからでしょうか?

尾林:聴き方にも当然コツがあると思いますが、僕は“こちょこちょ”するイメージでやっています。

人ってくすぐると自然と声が洩れるじゃないですか。それの反応は、「わー」なのか「やめろー」なのか、くすぐられる部分や強度よって反応が違うけれど、そこに人柄も出る。どう見えるかとか気にせず、本人の中から滲み出てくるそういうものが本質で、それを出させるのが僕の仕事だと思っています。

そういう声が出てくると、「聞いて欲しい」とか「それを形にしたい」とか、みんな欲があるんですよ。ツイッターでかっこいいこと言いたいとか、フォロワーを獲得したいとかそういう話ではなくて、自分自身の存在を確認したい欲というか。無条件に受け入れられる安心感があると、本音が出てくるんですよ。

原田:手を使わずにこちょこちょするって、なかなかの技術ですね(笑)。

──なかなか心の声を発せないのは、社会に「安心感」や「受けいれられる環境」が足りていないからでしょうか。

原田:自分をさらけ出すことがあんまりスマートじゃないという風潮は感じますね。僕もよく見ていますが、ツイッター上には、「言葉の武器を不用意に振り回している人」と「言葉の鎧を着てる人」が多い。趣向した言葉を140字で書いたり、気軽に攻撃的なコメントをしちゃったりね。もちろん、自分の投稿に対して「そうですよね!」とか共感があって、仲間がつながっていくってこともできるけれど。

尾林:化粧や服装みたいな“身なりがしっかりしている”というイメージが、表現にまでも求められている気がします。
次ページ > 「弱まらないために通ってるんです」

編集=鈴木奈央 写真=山田大輔

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事