データの欠落
最後に、データの欠落も、評価に大きな違いをもたらす。ある企業が特定のデータを報告していない場合、このデータの欠落を埋める方法は複数存在する。平均スコアを使うのか? 手元にあるデータから導き出すのか? 過去の開示データから推測するのか? この場合も、選んだ手法によって、かなり異なるESGスコアが出る可能性がある。
MITの調査結果でも同様の傾向が判明
マサチューセッツ工科大学(MIT)とチューリヒ大学の研究者からなるチームも最近、ハーバード大らの研究と同様の結論にたどりついた。こちらの調査では、研究チームはより定量的なアプローチを用いて、ESGスコアの違いを分析した。その結果、ESGランキングにおける相違の大部分は、定義やカテゴリーの区分けの違いによるものであることが判明した。さらにこの研究では、異なる企業の評価方法に、ある程度の主観的要素が入り込むこともわかった。
投資家にとってESGの重要性は高まり続けており、企業の開示データもより詳細になってきている。しかしながら、正確な判断が可能になる単一の基準が存在しないため、どのESG評価機関を選ぶのかという問題が、投資家本人が考えている以上に、ポートフォリオの構成に大きな影響を与えている可能性がある。
考えようによっては、これは良いことなのかもしれない。自分の価値観をより忠実に反映するESGの測定方法を選ぶことができるからだ。だが現状では、単一のESG計測基準が存在しないと見られる点を、投資家は意識するべきだろう。